『対立を超える日々の実践』((アダム・カヘン著/英治出版/2025年)

世界的なファシリテーターであるアダム・カヘンさんの著書です。
本書では、システム変容に関わる人が実践したい7つの習慣がまとめられています。
システムとは、「目的を達成したり、特定のパターンの挙動を生み出したりできるように構造化された要素の集合体(人々、その他の生物、人工物、制度、規則など)」(p. 6)のことを指します。
我々は何かしらのシステムの中で生きています。
社会、コミュニティ、会社組織など。
「システムは、一人や一つのチームが一つの大きな変容アクションを起こすことによってではなく、むしろ多くの人々がさまざまな理由で、個別に、または一緒に、数多くの小さな行動を起こすことによって生成的に変容していく。」(p. 32)
会社組織の場合、いかに社員を巻き込めるかが組織変容の肝になるとも言い換えられます。
経営層がいくら組織変革を唱えても、社員がついてこないと組織は変わらない。
社員一人ひとりが「小さな行動を起こす」ことで会社が変わっていきます。
では、システム変容をどう促せばいいのか。
本書では、「根源からの関わり」が大事であるとしています。
「根源からの関わり」とは「他者と全霊で向き合う」(p. 39)ことです。
この能力を身につけるためには7つの習慣が必要になります。
- 責任を引き受けて行動する
- 三つの次元で関わる
- 見えないことに目を向ける
- 裂け目に働きかける
- 進むべき道を模索する
- 異なる他者と協働する
- 忍耐強く続け、休息する
これらの能力を少しずつ伸ばしていきたい。
これらの習慣は、日々実践しながら自身ができているか振り返ることが欠かせません。
私は「三つの次元で関わる」という考え方が印象に残りました。
三つの次元とは、①システム全体、②システムの構成要素、③構成要素間の関係、です。
これら三つの次元を統合していかないといけない。
会社組織に当てはめると、組織全体をみる経営の視点、組織を構成する社員、そして、社員間のコミュニケーション、と私は捉えました。
いずれかに長けている経営者はいると思いますが、三つの次元で関われている経営者は少ないと思います。
経営者なので、当然、経営の視点はあります。
では、社員のことをしっかり考えることができているか、社員間(社長と社員間含む)のコミュニケーションがしっかりできているか。
どれかが片落ちになっているケースがほとんどではないでしょうか。
私が経営者だった頃を振り返ると、圧倒的に「組織を構成する社員」への意識が薄かったです。
社員のことは大事にしていましたが、本当に愛情を持って接することができていたかというと疑問です。
支援者となった今でも、支援先に対して働きかけるときにこの部分が薄くなっている。
ここが私の課題だと気づきました。
これら三つの次元で経営できている経営者が何人か頭に浮かびます。
組織風土を考えると確かに雰囲気が良いし、経営の状況も良い。
他にも自分の課題だと思わせてくれる箇所が随所にありました。
習慣6の「異なる他者と協働する」がその例です。
「(システム変容の実践者たちは)変容の目標を達成するためには、自分と意見が合わない人、好きではない人、信頼できない人々も含めて、他者と協働する必要があることを理解し、そして実際にそれを成し遂げている。」(p. 169)
なかなか簡単なことではありません。
好きではない人、信頼できない人とは協働したくない。
まずは、そういった人たちの意見だけは聞けるようにならないといけないと思いました。
システム変容には時間がかかります。
焦らず、地道にやっていかないといけない。
「システム変容には、短期的および長期的な結果の両方を視野に入れた行動が求められる。」(p. 194)
支援者としては、長い目で、地道に、クライアントの組織変容を促すという根気も必要であると認識しました。
学びの多い本でした。
テクニックではなく、システム変容実践者としてどうあるべきか、という在り方が書かれています。
こういう本が大好きです。
