『排出量取引とカーボンクレジットのすべて』(野村総合研究所著/エネルギーフォーラム)
脱炭素での取り組みのひとつに「カーボンプライシング」があります。
カーボンプライシングとは、企業などが排出するCO2(カーボン、炭素)に価格をつけ、排出量に応じた金銭的負担を求めることで、排出者の行動を変化させるために導入する政策手法です。
カーボンプライシングの中に、排出量取引、炭素税、クレジット取引などの仕組みがあります。
本書では、排出量取引とカーボンクレジットの仕組みや各国の動向などがまとめられています。
大変勉強になりました。
新聞を読んでいると、「排出量取引」、「カーボンクレジット」などの用語が出てくるのですが、いまいちよく理解できていませんでした。
本書を読み、どんな仕組みなのか、そして各国がどういった取り組みをしているかが理解できました。
EUは進んでいますね。
一方で、思ったほど世界中での取り組みが進んでいないという印象も受けました。
排出量取引にせよ、カーボンクレジットにせよ、まだ初期段階と言ってもいい状態だと思います。
それくらい仕組みづくりというのは多くの課題があるということでしょう。
カーボンオフセットという概念があります。
どうしても避けられない温室効果ガスの排出を他の場所で実現した削減・回収量で埋め合わせる取り組みのことです。
カーボンクレジットを付与したオフセット商品の事例が本書で出ていました。
2022年にトヨタユナイテッド静岡から、スポーツカー「スープラ」の販売でカーボンクレジットを付与して販売しました。
スポーツカーで排出されるCO2分を他で実現した削減分と相殺するということですね。
乗っている人にとっては、「環境面を配慮しながら」楽しく乗り続けられるというところに価値があるようです。
こういった製品はいろいろあるようです。
ただ、個人的にはちょっと理解しづらい(受け入れ難い)部分もあります。
オフセットしていても、結局はスポーツカーでCO2を排出しているわけで、ドライバーの後ろめたさを緩和するということにしかならない気がしました。
なんとなく本質とずれている気がしてしまい、個人的には違和感を感じます。
本書は仕組みの説明が主になっているので、基礎知識がないと理解しづらい部分もあります。
どちらかというと、辞書代わりに、仕組みの確認に活用していけると良さそうです。