『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/日経BP)
副題に「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」とあります。
この本を読むことで10の思い込みが何か、どう日々の情報に接していけば良いかがわかります。
多くの人は世界が悪い方向に向かっていると思い込んでいます。
メディアから流れてくるニュースは悪い出来事が多いのも理由のひとつです。
でも、世界は確実に良くなっている。
多くの国は成長して生活水準も上がっています。
乳幼児の死亡率、飢餓、安全な飲料水の確保、災害による死者数、女子教育、女性参政権、識字率、農作物の収穫量、予防接種など全て良くなっています。
なんとなく悪い印象を持ちがちになってしまう。その理由を、本書では10の思い込みによるものだとしています。
① 分断本能
② ネガティブ本能
③ 直線本能
④ 恐怖本能
⑤ 過大視本能
⑥ パターン化本能
⑦ 宿命本能
⑧ 単純化本能
⑨ 犯人探し本能
⑩ 焦り本能
⑤の過大視本能は、目の前に出てくる数字を重要だと思い込んでしまうことです。
数字を見せられるとその大きさに圧倒されるときがあります。でも、比較することで客観的に見直すことができます。
外資系企業で働いていた20代の頃、「数字をどう見せるか」というコツを学びました。プレゼン資料にグラフを載せる際、どう見せると自分たちの主張に合うものができるか。どう上司に報告すれば良いか(笑)。
数字は見せ方で真逆のストーリーを作ることができます。
そこで思い出すのは、新型コロナの感染者数のニュースです。
2020年4月、コロナが拡大し始めたころ、東京で1日の感染者数が「100」人を超えました。この数字で恐怖につつまれました。その後、3桁の数字に慣れてくると次第に恐怖感は和らぎます。
2020年12月31日、東京では1日の感染者数が「1000」人を超えました。大晦日のこのニュースに大変驚いたことを今でも覚えています。
「100」は「1000」と比べると10分の1です。
ちなみに、現在(7月下旬)の東京の1日の感染者数は「8000」人です。
「100」は「8000」の1.2%です。今から思うと、国中が数字に一喜一憂していました。未知のものであるからこそ多くの人は恐怖に包まれ、過大視していたのだろうと思います。
⑨の犯人探し本能もよく見かけます。何か問題が起きると犯人探しをしがちになります。
「誰かを責めるとほかの原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いを防げなくなる。」(p.282)
ニュースを見ているとよく犯人探しをしています。感情的には特定の人物を批判したくなることはわかります。
本書では、犯人探しではなくそうなってしまった原因が何かを探すことが大事であると指摘します。
某企業の不正問題が話題になっています。企業のトップは批判されて仕方ありませんが、そういう不正を起こす組織の仕組みがどういったものであったのかを見ていかなければならないと思います。
世の中を見ていく際に、どういう視点で見ていくことが大事かを教えてもらえる本です。