事業承継の計画を作る上で考えておきたいこと|事業承継の計画作成3つのステップ

こんにちは、3Cサポートの平山です。

ご自身の事業を事業承継する時期は何年後を想定していますか?この2〜3年内ですか?まだまだ先のことですか?

事業承継のことが頭の片隅にありモヤモヤしている社長も多いと思います。モヤモヤを解消するために、事業承継の計画を作ることをおすすめしています。

ここでは、事業承継の計画を作る上で早めに検討しておきたいことを解説します。

目次

事業承継の計画づくりは必要?

「事業承継のことは頭の中でいつも考えているし、計画を作る必要はあるのですか?」

というご質問を受けることがあります。

計画はあくまでも計画ですので、作ったからといってどこまでプラスになるかは人それぞれです。計画を作らずともそのときの流れで事業承継ができることもあります。

それでも、事業承継の計画を作ることをおすすめしています。計画を立てることで得られるものがあります。

計画を立てることで得られるもの

実際に計画を立てていくと、頭の中でモヤモヤしていたものが整理されてきます。常に頭の片隅で考えていることを計画書という形にすることで気づきも得られるようになります。

そうなると、不安な感情もなくなり、取り組む内容に意識を向けることができるようになります。

やるべきことの明確化

計画を立てるということは、時間軸を決めるということにもつながります。時間軸がはっきりしてくると、いつまでに何に取り組む必要があるかが整理されてきます。

事業承継の時期が10年後だとしても、逆算して考えると意外とあまり時間がないというケースも出てきます。

社長の人生プラン

事業承継は社長にとって大きなイベントです。後継者にバトンタッチした後、どのような人生プランにしていくかも併せて考えていくことになります。

後継者の人生プラン

事業承継には後継者が必要です。M&Aは別ですが、後継者候補を社長の周りにいる人材から選ぶことになります。

後継者候補にもその人自身の人生プランが必要です。本当に後継者として生きていくことが幸せかどうかも一緒に考えていくキッカケになります。

国の支援策

事業承継計画を作ると国の支援策も受けられます。事業承継に関わる補助金、税制面での優遇措置、日本政策金融公庫からの融資などがあります。

事業承継の計画づくりで何を考えるか

事業承継の計画というと、

○ 株式をどのように譲渡するのか?

○ 税金対策はどうするのか?

といったことに焦点が当たりがちになります。

しかし、それは考えたい事柄の一部であって、大事なことは他にもあります。

大きく分けて3つの項目をどのように引き継いでいくかを考えていきます。

後継者を誰にするかが一番大切な部分です。

  • 社長が育ててきたこの事業を継続して運営できるかどうか
  • 会社の価値観を引き継いでいけるかどうか
  • お客様や取引先から理解が得られるかどうか など

後継者に関して考えることはたくさんあります。社長が後継者候補を選んでいくことになりますが、後継者候補となった人にも人生があります。

最終的には、後継者候補の「腹落ち」が欠かせません。

▼参考
社員の後継者候補が事業承継をためらってしまうワケ|従業員承継で社長が押さえておきたい後継者視点

後継者以外にも従業員のことも考えたいです。後継者を支える幹部をどう育てるかという視点も必要になります。

資産

会社が保有する資産には、株式、資金、設備、不動産等があります。これらの資産の引き継ぎは相続税・贈与税なども絡んでくるため、顧問の税理士など専門家に相談しながら進めていくとスムーズです。

形のない経営資源

形のない経営資源とは、会社の理念、会社の文化、顧客との関係性、ノウハウ、技術、情報などです。

形がない分、どのように引き継いでいけるかが大きなテーマになることが多いです。

事業承継というと、人や資産のことに焦点が当たりがちですが、こういった形のない経営資源をどう引き継ぐかを計画に落とし込むことも大事になります。

簡単な事業承継計画を作ってみる

事業承継の計画づくりといっても、まずは簡単に情報を整理することから始めるといいと思います。おすすめの流れをご紹介します。

ステップ1:方向性を決める

事業承継の方向性を決めます。事業承継には大きく分けると4つのパターンがあります。

  1. 親族への事業承継
    社長の子どもなど親族へ承継する
  2. 従業員への事業承継
    会社の従業員や役員へ承継する
  3. 「所有と経営の分離」
    社長は株を持ち続け、経営を社内外の人材に任せる
  4. M&A 
    事業を第三者へ売却する

どのパターンの事業承継にしていきますか?

それぞれのパターンで押さえておきたいことをこちらの記事にまとめていますので、参考にしてください。

▼参考
中小企業の一大イベント「事業承継」の方向性をどう決める?|押さえておきたいこと

ステップ2:時期を決める

後継者にバトンタッチする時期を決めましょう。社長がいつまで「社長」として会社に携わっていたいかによりバトンを渡す時期も変わります。ご自身の年齢のこと、体調のこと、その後の人生プランのことなど総合的に判断して時期を決めてください。

例えば、事業承継の時期を5年後と決めるとします。そのとき、社長は何歳ですか?後継者候補は何歳ですか?後継者を支える幹部は何歳ですか?

これらを考えるだけでも、いろいろな気づきが出てきます。

ステップ3:取り組むことを洗い出す

ステップ2でバトンタッチの時期を決めました。それまでに何をする必要があるかを書き出してみてください。

例えば、5年後に社員である後継者候補へバトンタッチするとします。

  • 後継者候補へバトンタッチすることをいつ伝えますか? 後継者候補が難色を示したらどうしますか? 
  • 後継者候補を経営者としてどのように育成しますか?いつまでに何ができるようになるといいと思いますか?経営者としての「覚悟」を持たせられますか?
  • 後継者候補を支える人材は育っていますか?育っていないなら、どのように育成していきますか?
  • 社長自身はこの5年間でどのようなことに力を入れますか?
  • 今のビジネスモデルで後継者候補へ引き継げますか?

この他にも、金融機関からの借入金をどうするか、株式の譲渡、取引先の理解、従業員の理解などやることはどんどん出てきます。そういった取り組みを洗い出し、スケジュールに落とし込んでみてください。

意外と後継者へのバトンタッチまでにやることが多く、「時間が足りない!」と思うかもしれません。

計画を立てることで現在取り組むべき課題が見えてくることも多いです。

事業承継の計画を立てた社長の事例

事業承継は7年後を想定している社長が実際に事業承継の計画を検討した事例をご紹介します。

会社: スポーツ用品の卸売業

社員: 10名

社長: 50代前半

20年前に創業し事業を拡大させてきました。社長には子どもがおらず、「自分に何かあったら会社はどうなるのか」という不安を抱えていました。事業承継のことはずっと頭の中で考えていましたが、どこからどう手をつければいいかわかりませんでした。

私が社長と面談した際に、まずは計画を作ることでモヤモヤを取り除くことを提案しました。そこから3ヶ月かけて簡単な事業承継の計画を作りました。

<ステップ1:方向性を決める>

親族内で後継者候補が見当たらず、従業員へ承継することに決めました。M&Aは、従業員への承継ができなかった場合の選択肢に残します。

<ステップ2:時期を決める>

バトンタッチの時期を7年後に決めました。社長はバタンタッチ後数年間は会長として後継者をサポートしたいと考えました。当初は後継者候補が3人いましたが、経営者としての資質や育成期間を検討するにつれ、適任者は1人しかしないという結論になりました。

<ステップ3:取り組むことを洗い出す>

7年間で取り組むことを洗い出すと、思っていたほど時間に余裕がないことがわかってきました。後継者へバトンタッチすることで、その後継者が担っていたポジションを代わりにできる人材をどう育成するかが課題に挙がりました。そして、組織を機能させるためには人材が足りなくなることが見えてきたため、採用にも力を入れる必要がることが判明しました。

計画を作ったあと

社長の頭の中でモヤモヤしていただけだったのが、計画を作ることで今何に集中するべきかが整理されました。

早速、後継者候補へバトンタッチの意向を伝え、人材採用も開始しています。

まとめ

事業承継を計画として落とし込むことで社長の頭の中が整理されます。そして、今現在何に取り組むべきかもはっきりしてきます。

まずは3つのステップで簡単に事業承継の計画を作ってみてはいかがでしょうか?

  • ステップ1:方向性を決める
  • ステップ2:時期を決める
  • ステップ3:取り組むことを洗い出す

事業承継計画の雛形が公的機関のホームページからダウンロードできます。

こちらも参考にしてください。

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35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家