こんにちは、3Cサポートの平山です。
事業承継の時期を考えていますか? 10年後くらいですか? ここ3年以内ですか?
「事業承継」という言葉が頭の片隅にある社長も多いと思います。バトンタッチの時期は先でも今から考えておきたいことはたくさんあります。
今回は、事業の引継ぎを考え始めたときに検討したい補助金をいくつかご紹介します。
目次
事業の引継ぎでまず考えたいこと
事業承継の方向性
事業承継には大きく分けると4つの方向性があります。
- 親族への事業承継
社長の子どもなど親族へ承継する - 従業員への事業承継
会社の従業員や役員へ承継する - 「所有と経営の分離」
社長は株を持ち続け、経営を社内外の人材に任せる - M&A
事業を第三者へ売却する
どの方向性にしますか?
そして、
誰に引き継ぎますか?
引継ぐ人を見つける(育てる)ことが社長の大事な役割のひとつです。
ここでさらに考えておきたいことがあります。
それは、
今の事業をその後継者は引き継ぎたいと思えるか
今の事業を後継者が引き継ぎたいか
既存の事業を後継者となる人が引き継ぎたいと思えるようにならないと、先に進めなくなります。
後継者が引き継ぎたいと思える事業になっているかを確認していくことも大切です。
たとえ、子どもが会社に社員として入っていたとしても、引き継いでもらえるかはわかりません。
知り合いの中小企業(小売業)で、60代後半の社長のもと30代の子どもが部の責任者として会社に入っていました。子どもを後継者候補として考えており、20代の頃には他の会社へ出向させ育成してきました。
その後継者候補にこう聞いてみました。
「社長は3年後くらいに引き継ぎたいと言っていますが、引き継ぐ覚悟はできていますか?」
こういう答えが返ってきました。
「正直今のままでは引き継ぎたいと思えません。社内の体制もそうですし、業界としても将来性が感じられない。」
子どもだったとしても、今の事業に魅力を感じないと引き継ぎたいと思えないということがわかりました。
子どもでもそうなので、社員の後継者候補も同じです。M&Aで売却するにも、魅力がないと買い手が見つからないということも考えられます。
▼参考
社員の後継者候補が事業承継をためらってしまうワケ|従業員承継で社長が押さえておきたい後継者視点
中小企業の多くは赤字体質
中小企業の多くは赤字体質になっています。全体の7割が赤字決算だとも言われています。
赤字体質が続く事業を、後継者候補は引き継いでいきたいとなかなか思えません。
事業をより魅力的に
では、どのように事業を魅力的にしていくか?
事業を魅力的にするために以下の視点も必要になります。
○ 利益体質か
利益がしっかり出る状態にしていく。
○ 将来性はあるか
事業や業界に将来性があるかどうか。どのようにすれば見通しが明るくなるか。
○ 今の時代に合っているか
デジタルをどの程度活用できているか。働き方はどうか。
後継者が引き継ぎたいと思えるように、まずは事業を魅力的にしていく。そのために補助金を活用していくこともおすすめです。
事業の引継ぎに向けて活用したい補助金
事業の魅力化を進めていくときに活用できる補助金があります。事業承継の時期まで時間に余裕がある事業者におすすめです。
また、後継者候補が決まっているのであれば、補助金申請を後継者候補が行うことも「育成」という観点では有効です。というのも、補助金申請では「経営計画書」や「事業計画書」を作成する必要があり、それが経営者育成につながるからです。
「IT導入補助金」
ITツールやソフトウェアを導入することで、業務の効率化、セキュリティ推進、デジタル化の推進などを支援する補助金です。
デジタル化等で生産性を向上させていくことで事業の魅力も増してきます。IT関連ツールを導入してから生産性が上がるまでにはある程度の時間がかかりますので、余裕を持って検討したい補助金です。
2022年度は3つの申請枠で募集があります。
- 通常枠(A・B類型)
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
(令和3年度補正 サービス等生産性向上IT導入支援事業)
*年度によって内容に変更が生じる可能性があります
「小規模事業者持続化補助金」(小規模事業者向け)
小規模事業者向けの補助金で、ホームページ制作、SNS運用、チラシ作成といった販促に活用できる補助金です。
比較的取り組みやすい補助金ですので、新しい販促方法を試すといったときに活用することもおすすめです。
また、申請書も書きやすいため、後継者候補に申請書(経営計画書・補助事業計画書など)を書かせることで後継者育成の手段にすることもできます。
▼参考:書き方の考え方
『小規模事業者持続化補助金』申請に必要な「経営計画書」と「補助事業計画書」の書き方
2022年度は6つの申請枠で募集があります。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
- インボイス枠
(令和3年度補正 小規模事業者持続化補助金(一般枠))
*年度によって内容に変更が生じる可能性があります
「事業再構築補助金」
新型コロナウイルス感染症や物価高騰など事業環境が厳しくなる中で、事業構造を再構築しようとする企業を支援する補助金です。
現在の事業をどう将来性のある事業へ転換させていき後継者へ引き継いでいくか、ということへの取り組みにおすすめの補助金です。
2023年度は7つの申請枠で募集がある予定です(2023年1月時点)。
- 最低賃金枠
- 物価高騰対策・回復再生応援枠
- 産業構造転換枠
- 成長枠
- グリーン成長枠エントリー
- グリーン成長枠スタンダード
- サプライチェーン強靭化枠
(令和4年度第二次補正 事業再構築補助金)
*年度によって内容に変更が生じる可能性があります
事業の引継ぎ準備が整ったらこの補助金
事業承継の方向性も決まり、事業の魅力化にも取り組んでいます。そのときに活用したい補助金は「事業承継・引継ぎ補助金」です。
「事業承継・引継ぎ補助金」
事業承継を機に新しい取り組みを行う中小企業や、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業を支援する補助金です。
大きく「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3つに分かれ、それぞれに申請枠が準備されています。
- 経営革新事業:事業承継の方向性によって申請枠が変わります
- 創業支援型
- 経営者交代型
- M&A型
- 専門家活用事業:M&Aで専門家を活用する場合です
- 買い手支援型
- 売り手支援型
- 廃業・再チャレンジ型:廃業や再チャレンジを支援する申請枠です
- 単独申請
- 併用申請
(令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金)
*年度によって内容に変更が生じる可能性があります
まとめ
事業を引き継ぐ前段階で活用できる補助金、事業を引継ぎ際に活用できる補助金の代表的なものをご紹介しました。
この他にも、都道府県単位で出ている補助金もあります。
後継者となる人が既存事業に将来性を感じないと、引き継ぎは難しくなります。そのためにも、事業承継を考え始めたときから事業の魅力を増す取り組みを考えていきたいところです。こういった補助金を活用しながら、良い形でバトンを渡していきたいですね。
補助金を活用する際の注意点として、補助金の申請から取り組み実施完了までには1〜3年程度かかります。補助金を活用する際には、余裕を持って計画を立てることをおすすめします。