こんにちは、3Cサポートの平山です。
事業承継には大きく分けると親族内承継、従業員承継、第三者承継があります。
前回の記事では「親族内承継」を、前々回の記事では「従業員承継」に関してポイントをまとめました。
今回は、「第三者承継」のメリットとデメリットについて考えていきます。
目次
第三者承継
第三者承継とは
第三者承継とは、自社の事業を外部の第三者(他の事業者や個人など)に事業を譲渡することを指します。
後継者不足などが原因で事業の承継が難しい場合や、事業を発展させるための新たなパートナーシップを築くために利用されることがあります。
中小企業が第三者承継する割合
中小企業の事業承継で、第三者へ承継を行う事業者はどのくらいの割合でしょうか。
帝国データバンクの調査(全国企業「後継者不在率」動向調査(2022))では、第三者承継であるM&Aを行う割合が20.3%となっています。近年は増加傾向にあり、多くの中小企業事業者が選択肢として検討していることがわかります。

第三者承継が増えている理由
第三者承継が増えている背景には、中小企業での後継者不足が大きく影響しています。
少子高齢化もあり親族内で後継者が見当たらないケースや、従業員で後継者候補がいないケースも増えています。特に、製造業や小売業など、伝統的な産業分野においては、家族経営が一般的であり、後継者がいない場合には事業の継続が困難となるケースも多く見られます。
先ほどの帝国データバンクの調査で、「後継者不在」と回答した企業の割合は約6割に上るという結果が出ています。
第三者承継のメリット
第三者承継を選択するメリットをいくつか見ていきます。
1. 事業が存続できる
後継者不在の中小企業が増えていますが、第三者承継を行うことで事業が存続できるようになります。
事業が存続できることで、従業員の雇用も維持することが可能になります。後継者がいない場合、事業が継続されないことによって従業員の失業が起こることがあります。第三者承継では、そのリスクを軽減できます。
2. 経営改善が期待できる
第三者承継で今までにはなかったリソース(人材、ノウハウ、技術、資金など)を活用して経営することになるため、事業の経営改善が期待できます。
新しい人材が経営を担うことで、今までとは異なる視点やアイデア等を経営に活かしていくことができ、自社の競争力を向上させることができる可能性があります。また、新しい経営者は自社の問題点を客観的に捉えることができるため、改善策を提案し、経営改善につながることも期待できます。
3. 新たな資金調達が可能になる
新しい人材が経営を担うことで、新たな資金調達が可能になる場合があります。
例えば、金融機関からの融資や投資家からの投資など、経営資源を増やすことができます。また、新しい経営者によるマーケティングや商品開発などの施策によって、売上増加や業績改善を実現することも期待できます。
4. セカンドライフのための資金が得られる
事業を売却することで、社長のセカンドライフのための資金を得ることができます。
多くの中小企業の社長は会社に個人的な資金を投入してきているケースも多いです。事業売却資金が得られることで、会社への個人貸付分が戻ってくることも期待できます。
第三者承継のデメリット
第三者承継のデメリットもあります。
1. 経営者との相性や文化の違いによるトラブルのリスク
第三者承継では、承継先の経営スタイルが異なる場合があります。企業文化の違いや方針の違いが原因でトラブルが起きる可能性があります。
譲渡に際し、事前に双方の価値観や方針の擦り合わせを十分に行っていくことが大切になります。また、売却して終わりではなく、譲渡後に承継先の組織文化とどう融合させていくかということも大事な視点になってきます。
2. 従業員の不安や離職リスク
第三者承継では、従業員の不安や離職リスクが生じることがあります。
人は変化を嫌います。組織文化の違い、経営方針の違い、人事制度の変更などから、従業員が受けるストレスは大きくなります。
第三者承継を進める際には、従業員に対して丁寧な説明が求められます。
3. ブランド価値や信頼性の低下のリスク
承継先によっては、お客様や取引先等からの企業イメージ、ブランド価値、信頼性が低下するリスクがあります。承継先のイメージが良くない場合、自社にマイナスの影響を及ぼすことも考えられます。
4. コストや手続きの負担
第三者承継では、コストや様々な手続きが必要になります。承継先探しから交渉・締結までには長い時間と費用もかかります。
事業の評価方法や買収価格の交渉などについて経験が不足していると、不利な条件で交渉してしまうことも考えられます。後継者がいないことを逆手にとり、買収価格が低く提示される可能性があることも認識しておきたいです。
第三者承継に必要な準備
第三者承継のメリットとデメリットを見てきました。
ここからは、第三者へ引き継ぐ際に、どのような準備をしていけばいいか、いくつかポイントを挙げていきます。
事業継承計画の策定
事業承継計画を作成しましょう。
事業承継計画には、事業価値の評価、譲渡時期、経営方針の明確化など様々な要素が含まれます。このような計画を策定することで、スムーズな譲渡ができるようになります。
現状把握と磨き上げ
事業の現状を把握します。
事業のどこに魅力や価値があるのかを明確にしておきます。そして、事業をどのように今よりも「磨き上げ」ていくかを考えます。事業を磨き上げることで、事業の価値が高まり、買い手にとって魅力的な企業になります。
買い手が事業の状況や将来性を評価する際に、次のような点が重要になってきます。
事業の収益性
買い手は、投資した資金を回収し利益を出すことも目的の一つです。事業の収益性が高い場合、買い手にとっては魅力的な事業です。財務状況を改善し収益性を高めることが必要です。
事業の将来性
買い手は、将来にわたって事業を継続していくことを目的としています。事業の将来性が高い場合、買い手にとっては魅力的な事業になります。事業の将来性を高めるためには、例えば、新しい製品やサービスの開発、販路の拡大、経営戦略の見直しなどが考えられます。
事業のリスク
買い手は、事業のリスクを評価します。事業に関する情報の開示や、リスクマネジメントの取り組みが重要です。事業の状況や将来性について正確かつ詳細に整理された情報は買い手にとって魅力的な要素となります。
適切なアドバイザーの選定
第三者承継には、税務や法務などの専門的な知識が必要です。そのため、適切なアドバイザーを選定することが重要です。
選定する際には、実績や信頼性、コストなどを比較検討し、適切なアドバイザーを選ぶといいいでしょう。
まずは身近にいる顧問の税理士に相談するところから始めるといいと思います。
買い手探し
買い手探しは時間がかかるため、早めに着手することが望ましいです。
買い手を探す方法としては、M&Aアドバイザー等の専門機関に依頼することや、M&Aプラットフォームを利用することが考えられます。
▼参考
後継者のいない中小企業はM&Aプラットフォームを活用することも選択肢のひとつ
まとめ
第三者承継のメリットとデメリット、承継までに準備をしたいことなどを見てきました。
第三者承継では、承継先を見つけるまでに時間がかかります。お互いが納得して事業を引き継いでいくためにも、時間に余裕を持って早めに準備に取り掛かっていきたいところです。
上に挙げたメリットやデメリットの重みは、事業規模や会社個々の事情によっても変わります。会社の実情に合わせて検討していくことをおすすめします。