社員の後継者候補が事業承継をためらってしまうワケ|従業員承継で社長が押さえておきたい後継者視点

こんにちは、3Cサポートの平山です。

事業を承継する後継者候補はいますか?社員へ事業を引き継いでもらいたいと思っている社長も多いと思います。ここでは、社員の後継者候補が不安に感じることをまとめます。

目次

後継者選びは社長だけでは決められない

私が事業承継のご相談を受ける際に、よく社長とこういったやり取りをすることがあります。

私:「後継者候補はいますか? 引継ぎはいつ頃を考えていますか?」

社長:「社内に後継者候補がいます。3年後くらいにはしたいと思っています。」

私:「もう後継者候補に話をしているんですか?」

社長:「まだしてないです。」

多くの社長は事業承継を2〜3年でできると思っています。そして、後継者候補には半年くらい前に話しておけば引継ぎもスムーズにいくと考えています。

ここで考えておきたいことがあります。

後継者の決定は社長だけでは決められない

ということです。

後継者選び、後継者育成は社長の仕事ですが、後継者候補にもいろいろ事情があります。

社長から、「事業を引き継いで欲しいんだ」と言われ、はじめは後継者候補は嬉しいかもしれません。

ただ、引き継ぐのをためらってしまう理由もいくつかあります。

後継者候補が事業承継をためらってしまうワケ

金融機関からの借入

会社が金融機関からどのくらいの借入をしているか?

一番気になる部分だと思います。

後継者候補となる人は債務に関する知識がない人が多いです。財務担当でないと関わることがあまりない分野です。

借入金の額を聞いて驚くかもしれません。個人としての金銭感覚からいうと大きな額に感じるものです。

例えば、会社が3,000万円の借入残高があるとします。会社の売上規模によってはそこまで大きい借入金額でないかもしれません。でも、個人として考えると3,000万円は大きすぎる額です。

そして、借入金に社長の個人保証がついていること、担保がついていることを初めて知ることになります。

こういった話を聞いただけで、多くの後継者候補は尻込みします。

国が「経営者保証に関するガイドライン」というものを出しています。個人保証を解除する方向性にしていきましょう、という指針です。

個人保証がつかないのであれば、後継者候補も前向きに考えられるかもしれません。ただ、実際には個人保証を解除できないケースも多いのが現実です。赤字体質であればなおさらです。

社長個人の会社への貸付

社長は会社へどのくらい個人的にお金を入れているのか?
それは返していく必要があるのか?

このテーマはあとあと問題になりやすいです。

後継者としての本音はこうではないでしょうか。

「それは私の責任ではないので、私の代で返していくのは腑に落ちない」

株式を買い取る資金

会社の株式を買い取るお金がない!

事業承継では株式をどう引き継いでいくかということも課題になります。

会社でずっと働いてきた後継者候補は、株式を買い取る資金がありません。業績の良い会社であればあるほど株価も高くなります。

後継者候補に子どもがいれば、子どもの教育へお金を貯めておきたいもの。老後のこともあります。どこまで自己資金で株式を買い取れるか。

金融機関から借入をするという選択肢もあります。

でも、後継者候補としては、

「そこまでしてやることなのか?」

ではないでしょうか。

事業の見通し

今の事業でこの先の見通しは明るいか?

社員である後継者候補はずっとこの会社で働いてきたので、この事業が今の時代の流れに乗っているかどうかをうすうす感じています。

この先も見通しが明るいのであれば良いですが、見通しが暗いと思った時点で後継者候補はこの事業を引き継ぎたいと思えなくなります。

社長の影響力

バトンタッチ後、どのくらい社長の影響力が残るのか?

中小企業にとって社長の影響力は絶大です。会社によっては、多くの社員が社長を見て仕事をしています。

今まで影響力を与えてきた社長が、バトンタッチ後もどのくらい影響力を残すのか。後継者候補には気掛かりな部分です。

「困ったときはサポートして欲しいが、自分の方針に口は出して欲しくない」

これが本音かもしれません。

後継者自身の人生プラン

この事業に自分の人生を賭けられるか?

後継者候補にも人生プランがあります。年齢や家族構成によっても違います。

事業を引き継いで経営者になるということは、今後の人生をこの事業と共に歩いていくということになります。

「自分の人生を賭けられるほど魅力のある事業なのか?」

「家族の理解は得られるのか?」

「あとで後悔しないか?」

きっとこのように自問自答すると思います。

社長が持ちたい後継者候補への3つの視点

後継者候補は指名された嬉しさもあると思いますが、不安もそれ以上に出てきます。そして、引き継ぐのをためらいます。

そこで、社長の中で後継者候補が決まったら、3つの視点を持って準備を進めていくことをおすすめします。

1. 後継者候補の「腹落ち」

前述のとおり、後継者候補が乗り越えないとならない心理的ハードルがたくさんあります。最終的には後継者候補が「腹落ち」できるかがポイントになります。

「腹落ち」には時間がかかります。2〜3年では足りないかもしれません。

「腹落ち」には何度も話し合いが必要になります。

早い段階で事業承継に関する話を後継者候補にしていきましょう。プラスのことだけではなく、マイナスの部分もしっかり伝えます。社長の会社への個人貸付を今後も返済してもらいたいのであれば、そのことも理解してもらうことが大事です。

社長と社員という関係性もあり、話し合いがスムーズにいかないことが考えられます。社員は本音を出さないかもしれません。そういうときは外部の専門家に入ってもらうことも有効です。

2. 後継者候補へのサポート

自分の大事な事業を社員に引き継いでもらうことは「有難い」ことです。

後継者候補がスムーズにバトンを受け取れるよう、手厚いサポート体制を作ってください。そして、後継者候補の価値観を尊重することが良い結果につながります。

サポート体制の中には、後継者候補を支える人材の育成も含まれます。そういった人材を育てることも社長の大きな役割になります。

3. 後継者候補とその家族の人生プラン

後継者候補にバトンを渡すということは、その人とその家族の人生を大きく変えることも意味します。

事業を自分で興した社長と、会社で働いてきた社員とでは、見ている景色や考え方が違います。家族の理解も違ってくると思います。

最後は後継者候補の責任で決めることですが、社長がこの視点を持つことで円滑な引き継ぎができるようになると思います。

まとめ

後継者の「腹落ち」が何よりも重要です。

「腹落ち」しないままバトンを受け取ると、あとから心理的負担として後継者にのしかかります。それがモチベーションの低下や社長への不信感につながる恐れもあります。そうなると会社の業績にも影響が出ます。

事業承継というと社長視点の話になりがちなので、今回は後継者候補がどのように感じるかという視点で書きました。ぜひ参考にしてください。

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35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士、ビジネスコーチ。