こんにちは、3Cサポートの平山です。
後継者不在の中小企業が増えている中、最近注目されているものの一つに「サーチファンド」があります。
地方銀行が「サーチファンド」へ資金を投じるという動きも出ています。
この「サーチファンド」がどういったものかを整理していきます。
目次
- 後継者とのマッチング「サーチファンド」とは
- 後継者とのマッチング「サーチファンド」のメリットとデメリット
- 後継者とのマッチング「サーチファンド」をどう活用するか
- 後継者とのマッチング「サーチファンド」活用の留意点
- まとめ
後継者とのマッチング「サーチファンド」とは
サーチファンド(Search Fund)とは、起業家が事業を買収するために設立されたファンドのことです。
経営者を志す人材(サーチャー)は、経営したいと考えている市場や業界を特定し、その後、ファンドから資金を調達、事業を探索するための費用として使用します。サーチャーが買収可能な事業を見つけたら、ファンドからの支援をもとに事業を買収し経営を引き継ぎます。
一般的に、1年から3年間の期間で買収までの準備を行います。
ファンドにとっては、事業の直接的なオーナーシップによるリスクを回避しながら、中小企業に投資する機会を提供することができます。
サーチャーは、サーチファンドの支援を受け、買収前のデューデリジェンスや買収交渉、資金調達、事業の統合など、買収プロセス全般を支援してもらえます。また、サーチファンドを通じて事業を買収するための費用として資金調達することができるため、自己資金や銀行からの融資に頼ることなく事業を買収することができます。
この投資形態は1984年に米スタンフォードビジネススクールの教授によって提唱され、欧米を中心に増加傾向にあります。
一方、日本の中小企業においても、サーチファンドを利用した事業承継の取り組みが少しずつ増えています。しかし、まだまだ一般的な手法にはなっていません。
後継者とのマッチング「サーチファンド」のメリットとデメリット
後継者不在の中小企業がこのサーチファンドを活用する際に、どういったメリットとデメリットがあるか代表的なものを見ていきます。
メリット
後継者不在問題の解決
中小企業が直面する問題「後継者不在」を解決することができます。サーチファンドによって後継者候補者を見つけることができることが最大のメリットです。
事業承継支援
サーチファンドは事業承継に関する専門的なノウハウを有していることが多く、円滑な事業承継を行うための支援を受けることができます。事業承継に関する専門知識を持つコンサルタントからのアドバイスも期待できます。
成長支援
サーチファンドからの出資を受けることで、事業拡大や新規事業立ち上げなど成長戦略を実現することができます。経営戦略やマーケティング戦略など、企業の成長に必要なアドバイスも受けることができます。
企業価値の向上
企業価値の向上が期待できます。サーチファンドから適切な経営戦略やマーケティング戦略の支援を受けられることで企業の競争力を高めていくことができます。
時間と手間の削減
後継者不在問題や事業承継問題は、中小企業にとって時間と手間のかかる問題です。サーチファンドを通して、後継者候補者の選定、事業承継支援も受けられます。
デメリット
所有権の喪失
サーチファンドは中小企業に出資し事業承継を支援するという目的を持っています。その一方で、出資により所有権を得ることになるため、企業側は一定の権限を失うことになります。
利益の分配
企業が成功した場合には、その利益を分配することになります。そのため、企業が成功してもその利益を全て自分たちで享受できない可能性があります。
資金調達の難しさ
サーチファンドによる出資は、企業価値が高いと判断された企業に対してのみ行われます。中小企業側がサーチファンドから出資を受けるには、競争力のある企業としての評価を得る必要があります。
事業方針の変更
サーチファンドは、投資先企業に対して自社のノウハウやネットワークを活用し経営方針の変更を促すことがあります。自社の経営方針を変更せざるを得ない場合もあります。
後継者が適任でない可能性
後継者が適任ではない場合、企業の成長や存続に問題が生じる可能性があります。適任ではない後継者が選ばれた場合、その後の再構築が難しくなるため、事業承継の失敗につながる恐れがあります。
適切な選定プロセスを経て、後継者となる人物を選定する必要があります。ただし、この選定プロセスは時間とコストがかかるため、企業にとっては負担になることも考えられます。
後継者とのマッチング「サーチファンド」をどう活用するか
日本でサーチファンドによる事業承継の件数は少ないのが現状です。今後、サーチファンドを活用していくために、どのように進めていけばいいかをまとめていきます。
サーチファンドの情報収集を行う
サーチファンドについての情報収集を行います。自社の業界や事業に精通しているサーチファンドを探し、その投資対象や特徴などを調べることが重要です。インターネットやビジネス雑誌、取引のある金融機関などから情報を収集しましょう。
サーチファンドにアプローチする
情報収集を行ったら、サーチファンドにアプローチします。サーチファンドは、自社の投資対象を広く知らせることが多いため、問い合わせ先や申請方法が明示されている場合が多いです。自社の経営状況や事業の特徴、後継者不在の状況などをまとめ、アプローチしましょう。
面談や調査に協力する
サーチファンドが自社に興味を持った場合、面談や企業調査が行われることがあります。自社の業績や経営方針、後継者不在の理由などを詳細に説明し、サーチファンド側からの質問にも誠実に答えましょう。また、サーチファンド側から提示される条件や提案についても、細かく検討し、自社の将来を考慮して決定することが大切です。
サーチファンドとの契約締結
サーチファンドが自社に興味を持ち投資を決定した場合、契約の締結に進みます。契約内容には、投資額、支援内容、事業譲渡のタイミングなどが含まれます。契約内容については、弁護士や会計士などの専門家に相談し、細かく確認することが重要です。
事業承継の準備を行う
サーチファンドからの投資が決まったら、事業承継の準備を行います。自社の事業価値を再評価し、後継者不在による課題を解決するための戦略を検討しましょう。また、サーチファンドからの支援を受け、人材採用や組織改善、業務プロセスの見直し、新規事業展開など、積極的な取り組みを行いましょう。
サーチファンドは、後継者不在による経営継続の課題を解決するための有力な手段の一つとなっています。しかし、サーチファンドによる投資は、自社の事業価値を再評価することや、契約内容の細かな確認など、多くの準備が必要です。慎重かつ積極的なアプローチを行い、自社の事業継続を実現することが重要です。
後継者とのマッチング「サーチファンド」活用の留意点
サーチファンドを活用する上での留意点にも触れていきます。
マッチングの確認
サーチファンドとの相性、方向性、自社の将来ビジョンとのマッチングを確認することが重要になります。
サーチャーの選定
サーチャー(後継者候補)が自社を引き継ぐに適任かどうかの判断が大事になります。
業種特化の確認
サーチファンドによっては、特定の業種に特化しているものがあります。自社の業種や事業内容にマッチしたサーチファンドを選ぶことが望ましいです。
契約内容の詳細確認
投資額、支援内容、事業譲渡のタイミングなど、契約内容には多くの要素が含まれます。契約内容については、弁護士や会計士などの専門家に相談し、細かく確認することが重要です。
自社の戦略との整合性確認
自社の戦略とサーチファンドからの支援内容について、整合性があるか確認することが必要です。自社の将来ビジョンとの一致がなければ、事業承継後の運営に不安が残ります。
まとめ
中小企業の事業承継の手段のひとつとして期待されている「サーチファンド」について見てきました。
サーチファンドは発展途上でもあり、サーチファンドやサーチャーの人数はまだまだ少なく、資金を出す投資家も少ないのが現状です。また、自社が投資対象になり得るのかという問題もあります。
それでも、事業承継のひとつの選択肢として期待できる形態ではあります。