後継者を育成する中で気づかせたい「謙虚さ」|私が先代社長から学んだこと

こんにちは、3Cサポートの平山です。

社長が後継者候補へのバトンタッチを考え始めたとき、気になることの一つは、「はたして後継者候補は経営者に適任なのか」ではないでしょうか。

引き継ぎまでに時間があるようなら、後継者候補の育成に力をいれていきたいです。

▼参考
事業承継までにどう社内の後継者を育成するか|リソースの限られた中小企業

今回は、後継者に気づかせたい「謙虚さ」に関して、私が諸先輩方から学んだことも踏まえて考えていきます。

目次

後継者に必要な「謙虚さ」

謙虚であることの大切さはいろいろなところで言われています。

謙虚とは

謙虚とは、控えめ・慎ましい・おごり高ぶらないことを意味します。

謙虚な人は、どれだけ地位が高くても、能力があっても、他者からの意見などを素直に受け入れられます。

実るほど頭を垂れる稲穂かな

「実ほど頭を垂れる稲穂かな」という有名な言葉があります。稲は実が熟すほど穂に重みが増し垂れ下がってきます。

この域に達するのは容易なことではありませんが、後継者にはこの大切さを気づかせたいところです。

後継者が謙虚であることでの良い影響

後継者が謙虚さを持って会社をリードしていくと、社内・社外に対して良い影響もあります。

社内への良い影響

後継者が謙虚であると、事業承継時の社内の雰囲気にも良い影響を与えます。

事業承継は会社の大きなイベントであり変化でもあります。当然、従業員は不安を感じます。後継者に反発心を抱く従業員もいるかもしれません。

後継者が謙虚な姿勢で従業員の意見に耳を傾けることができると、従業員の不安も少しずつ解消していきます。

社外への良い影響

後継者が謙虚であると、社外にも良い影響を与えます。

お客様、取引先、金融機関など、社外で会社に関わる人たちも次の社長がどのような方針なのか不安を感じています。

謙虚な姿勢で接することで、安心感を与えることにつながるだけでなく、理解や協力も得られやすくなります。

後継者が謙虚さを失うことのマイナス面

一方で、後継者が謙虚さを失うことで経営にマイナスの影響が出ることも考えられます。

社外からの信頼低下

後継者に謙虚さがないと、取引先などから会社に対する信頼が低下することが考えられます。

既存の取引先は会社への信頼が厚いため取引をしています。その信頼性を構築してきたのは社長によるところが大きいです。中小企業では社長が営業の第一線で信頼を得てきたという面もあります。

事業承継後は、どうしても社長と後継者が比較されてしまいます。そのときに、後継者に傲慢や高飛車な部分が見え隠れしたら、こういう後継者を選んだ会社に対する信頼性が低下する恐れがあります。

視野が狭くなる

謙虚さが欠いているときは、他者からの意見がなかなか入りづらくなります。

経営判断には高所からの広い視野が求められます。ただでさえ自分だけでは視野が狭くなりがちになるため、他者からの意見は貴重です。

トップが謙虚さを失ったとき、経営判断に大きな影響が出るのでしょう。

学ぶ機会の損失

謙虚な人は他者の意見に耳を傾けます。すでに知っていることであっても、謙虚な人ほど、初めて聞くかのように熱心に聞くものです。

以前、私はこんな経験をしました。

ある中小企業支援に関する無料セミナーをオンラインで受講しました。支援方法が心理学的要素を含んだものであり、私は以前から実践していることでした。オンラインということもあり、他の作業をしながら聞いていました。当然、多くは頭に残りませんでした。

その翌日、私の大先輩で心理学関連の専門家であり中小企業診断士でもある方のブログを読みました。そこには「大きな学びのあった1日」と感動した内容が詳細に書かれていました。心理学の専門家でもあるこの方にとっては、セミナーの内容はすでにわかっていた内容だったはずです。それでも謙虚に学ばれている姿勢に私は猛反省しました。

後日、このセミナーを動画で再度視聴しました。今回は「謙虚さ」を意識しながら視聴したら、大きな気づきと新たな学びがありました。

このような経験から学んだのは、謙虚さを失っていると学びの機会を逸するということでした。

後継者に謙虚さを気づかせるために

では、どのように後継者に謙虚であることの大切さを気づかせることができるのでしょうか?

社長の率先垂範

一番効果的なのは、社長が自らの行動で後継者に謙虚な姿勢とは何かを示すことです。

後継者は常に社長の言動を見ています。後継者として指名されたときから、社長の考え方、人との接し方などを観察しています。社長が謙虚な姿勢で経営していれば、後継者はそれを模範とするのではないでしょうか。

後継者との対話

後継者によっては、謙虚さの大切さを理解していないことがあります。社長が謙虚な姿勢を見せていたとしても、後継者がそれを「謙虚」とは受け止めない場合も考えられます。

社長は後継者を育成していく中で、この「謙虚さ」ということを後継者との対話を通じて伝えていくこともできます。頭で理解すれば、目の前の現象の受け止め方も変わります。それが後継者の気づきにつながっていきます。

後継者として私が学んだ謙虚さ

私は以前、中小企業を後継者として経営しました。そのときに先代社長から多くのことを学びました。そのうちのひとつが「謙虚さ」でした。

学び① 人への接し方

先代社長との出会いは、私が経営に携わる1年前でした。一番驚いたことは、先代社長は常に私に対して敬語で接したことです。出会ってから、今に至るまで変わりません。30以上歳の離れている私に対して常にリスペクトな態度で接してくれます。もちろん、他の人に対する態度も同じです。

どうしてこういう姿勢でいられるのか。一番驚いたことであり、未だに頭の下がる思いです。

学び② 学ぶ姿勢

先代社長は何かあると周りに意見を求めます。年齢や役職などは関係ありません。他者の意見を尊重し、参考にし、自身の判断に取り入れていきます。取引先など外部の関係者からの意見にも真摯に耳を傾けます。

このような学ぶ姿勢を常に見てきました。会社をリードするということはどういうことかを、こういった姿勢から私は学びました。

学び③ 常に感謝

お客様から耳の痛いクレームを受けることがありました。クレームの種類によっては気持ちが沈むこともあります。

先代社長はこういったクレームに対して、「こういうことを言ってもらえて本当に感謝ですね」とよく言っていました。

経営で困難があったときも、「社長(私)の成長につながりますね。感謝ですね」と言ってくれました。

現象としてマイナスに見えることも、常に感謝の気持ちで捉える姿勢は、私の大きな学びになりました。

このように、社長が謙虚さを言動で示していると、必ず後継者は模範にしますし、謙虚であることの大切さを意識するようになるのだと思います。

まとめ

後継者育成を考えていく上で、この「謙虚さ」をどう気づかせるかという視点も取り入れたいです。

すぐに謙虚になることは難しいので、まずは意識させること、謙虚であることの大切さを認識してもらうこと。これを大事にしていきたいです。

そして、社長が自ら謙虚な姿勢を示すことが後継者の気づきを促すものだと、後継者として学んだ側の立場として実感しています。

事業承継に関するご相談

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家