こんにちは、3Cサポートの平山です。
事業承継でバトンを受け取る後継者は、一旦立ち止まって既存事業を客観的に見直すことが大事になります。
その事業に社員として従事していれば、事業への思い入れも強くなり、どうしても視野が狭くなりがちになります。
引き継ぐ事業を俯瞰して見るためにも、「事業のライフサイクル」という視点を持つことも有効です。
目次
事業のライフサイクルとは
事業ライフサイクルとは、事業を生物と同じように、誕生、成長、成熟、滅びていくという考え方で表したものです。
事業規模の変化によって、「導入期」、「成長期」、「成熟期」、「衰退期」に分かれ、S字カーブで表現されます。
導入期
会社を創業した時期で、商品やサービスを市場に送り出す段階です。自社の商品やサービスの認知度が低いため、広告費等の販促費に大きなコストがかかります。売上はゆるやかに上がっていきます。
成長期
商品やサービスへの認知度が高まり、売上が急激に上がってくる段階です。新規のお客様がリピートにつながりますので、市場でのシェア拡大を図っていきます。
成熟期
売上が安定、またはゆるやかに下降していく時期です。他社商品との差別化、既存のお客様の維持、新規開拓などが求められます。
衰退期
この時期になると他社商品も市場に出回り、売上や利益が下がっていく段階です。事業が赤字になる、借入金の返済が厳しくなるなど事業の運営は厳しくなってきます。
事業承継を考えている中小企業の多くは、成熟期または衰退期ではないでしょうか。
事業のライフサイクルを把握しておくメリット
後継者として既存事業を引き継ぐ際に、この事業のライフサイクルを把握しておくことをおすすめします。いくつかメリットがあります。
現状把握に役立つ
事業を引き継ぐとき、改めて既存事業を見つめ直すことになります。現状どのような状況に今の事業が置かれているかを様々な角度から見ていくことで、何に取り組んでいくべきかが把握できるようになります。
このときに事業のライフサイクルという視点を取り入れると、事業を俯瞰して見る手助けになります。
引き継ぐ事業はライフサイクルのどこに位置しているのか。成長期であれば、引き継ぐ側としては上昇思考で気持ちも上がるかもしれません。誰も自分の情熱を傾けているものが衰退期に入っているとは思いたくないもの。それでも、仮に衰退期であるとするなら、現実を直視することも必要になります。
課題を明確にしやすい
事業のライフサイクルという視点を持つことで、これから自社が取り組まないといけない課題を明確にしやすくなります。
例えば、ここ数年間売上が減少傾向にあるとします。これだけ見ると、課題は、売上をどう上げるかになります。事業のライフサイクルという視点で捉えると、成熟期後半になっているかもしれません。これから売上の減少傾向が加速することが予想できるのであれば、新商品を開発するなど新しい取り組みに着手していくことが課題になります。
方向性
自分たちが事業のライフサイクルのどこにいるかがわかれば、事業承継後の方向性も決めやすくなります。
成長期にいれば、人手不足が問題になりやすいため、生産性を上げるために業務の効率化を推進していくことになるかもしれません。
<参考>
中小企業庁から出ている『中小企業のライフサイクル』という資料があり、ここではライフサイクルを「幼年期」「成長期」「成熟期」の3つに分け、必要な支援策をまとめています。
事業のライフサイクルを自社に当てはめる
事業のライフサイクルを自社に当てはめて考えていきます。
現在位置
引き継ぐ事業は、事業のライフサイクルのどの位置に当てはまるのか。
課題は何か
事業のライフサイクルで当てはめた上で、自社の課題を明確にします。
承継後の方向性をどうするか
明確にした課題の取り組みと事業のライフサイクルを踏まえ、承継後にどのような方向へ会社を導いていくのかを決めていきます。
事業のライフサイクルを踏まえた事業計画づくり
後継者が事業を引き継ぐ際に、今後の事業計画を立てます。その際に、事業のライフサイクルという視点も盛り込みながら計画を策定することをおすすめします。
事業計画
事業計画とは、この事業の向かう方向性を定め、どのように進めるか具体的な取り組みをまとめた計画のことをいいます。
後継者としては、先代社長からバトンを受け取ったあと、既存事業をどう進めていくかを考え整理していくことになります。
こういった事業計画を作ることは、特に経営状況が厳しいときや、金融機関からの融資を受けたいときなどにとても役立ちます。
▼参考
事業承継の際に後継者が作りたい今後の事業に関する計画|後継者向け
検討したい内容
事業のライフサイクルのどこに位置するかで、以下の項目の捉え方が変わります。
○ 商品・サービス
自社が提供している商品・サービスに変更を加える必要があるかどうか検討します。成熟期以降であれば新しい商品・サービスの提供、もしくは付加価値を高めることを考えていきたいです。
○ リソース
リソースがどの程度あるかでも取り組む選択肢が変わります。例えば、成長期であれば人的リソースの確保が必要になるかもしれません。衰退期では、人的リソースが不足していても採用する資金に余裕がないこともあります。
○ 顧客
事業のライフサイクルのどの位置にいるかで顧客層も変わります。成長期は新規からリピートにつながるケースが多く、成熟期ではリピート層が大半になります。自ずと顧客へのアプローチ方法が変わります。
○ 取引先
取引先の捉え方も変わります。成長期であれば取引先もこちらに力を入れますが、衰退期に差し掛かると取引量が減少するため取引先の態度も変わってくることが予想されます。その中でどのように取引先と良好な関係を維持・発展をさせていけるかも考えていきたいです。
まとめ
後継者が事業を引き継ぐ上で、「事業のライフサイクル」という視点を持つことは有益です。この視点で事業を捉え直すだけでも、新たな気づきが得られます。
事業承継を考えている多くの中小企業は成熟期以降にあります。衰退期の企業も多いです。
客観的に見て衰退期に入っている企業でも、先代社長は「まだまだいける!」と自信を持っていることもあります。この情熱は後継者も見習いたい部分ではありますが、やり方を変えていかないといけないことも確かです。事業承継はそのやり方を変えていくきっかけになります。
事業のライフサイクルという視点もぜひ取り入れてみてください。