事業承継の際に後継者が作りたい今後の事業に関する計画|後継者向け

こんにちは、3Cサポートの平山です。

社長が事業承継を考え始めたら、まずは「事業承継計画」を作ることをおすすめしています。これでどのように事業承継を進めていくかの道筋を明確にすることができます。

▼参考
事業承継の計画を作る上で考えておきたいこと|事業承継の計画作成3つのステップ

その後、事業を親族または従業員へバトンタッチする際には、後継者が主体となって今後の事業に関する計画(事業計画)を作ることが有効です。

今回は、事業承継後に後継者が作っておきたい事業の計画に関して考えていきます。

目次

事業承継の後を見据えた事業の計画づくり

事業承継後に今の事業をどのように進めていくかを後継者が主体となって計画することが大事になります。

事業計画とは

事業計画とは、この事業の向かう方向性を定め、どのように進めるか具体的な取り組みをまとめた計画のことをいいます。

後継者としては、先代社長からバトンを受け取ったあと、既存事業をどう進めていくかを考え整理していくことになります。

こういった事業計画を作ることは、特に経営状況が厳しいときや、金融機関からの融資を受けたいときなどにとても役立ちます。

事業計画と経営計画の違い

事業計画と似ているもので「経営計画」というものもあります。

簡単にいうと、経営計画は長期的視点から立てる大きな計画で、事業計画は短期・中期的に具体的にどう進めていくかの計画です。この2つは重なる部分もあります。

後継者は今までの会社の方向性をある程度は踏襲していきますので、まずは具体的にどういった方針で何に取り組むか検討していくことが求められます。

事業計画づくりの効果

計画づくりをしない中小企業の社長は多いです。頭の中で取り組むことがイメージできており、わざわざ計画に落とし込まなくてもいいという考え方を持つ社長もいます。

ただ、事業計画を作る効果もあります。

中小企業庁が行った調査によると、事業計画等の経営計画を作成した事業者は、作成しなかった事業者に比べ売上高が増加したという結果が出ています(「2016年版 小規模企業白書」)

計画を作成した効果としてもいくつか挙げられています。

大きな効果としては、経営方針の明確化自社の強みや弱みを把握販路開拓のきっかけになったなどです。

また、事業計画を作っておくことで、金融機関からの融資や補助金申請時にも活用できます。

事業計画で検討すること

一般的に、事業の計画を立てる際には以下を検討していきます:

  • 会社の理念
    • 会社の理念を確認します。理念が明確でなければ、このタイミングで作成することもおすすめです。
  • 事業概要
    • 事業概要を整理します。
  • 事業のコンセプト
    • 今までの事業のコンセプト、今後の事業のコンセプト、それぞれ整理します。
  • 自社の強みや弱み
    • 自社の強みは何か、そして弱みとしている部分は何かを列記します。
  • 外部環境
    • 会社外の環境で追い風となっているものは何か、向かい風となっているものは何かを列記します。
  • 商品・サービス
    • 提供している商品やサービスを具体的に整理します。
  • 競合他社
    • 競合他社に関して調べます。
  • 販売方法・マーケティング
    • 商品やサービスの販売方法、訴求方法、ターゲットとする顧客等をまとめていきます。
  • 従業員・体制
    • 従業員の持つ能力・スキル、今後の体制などを考えます。
  • 取り組み内容
    • この1−3年で取り組んでいく内容を検討します。
  • スケジュール
    • 取り組み内容をスケジュールに落とし込みます。
  • 財務計画
    • 財務関連の計画を立てます。

事業承継後の事業計画に盛り込みたい視点

事業承継でバトンを受け取ったあとにどのように事業を進めていくか。その計画を作る際に、特に考えておきたい視点があります。

時代の変化

時代の変化はどのようになっているか。

引き継ぐ事業は現在の時代の求めるものに合っているかどうかを客観的に検討したいです。

以前は時代に合って成長してきた事業でも、現在は時代遅れになっているものも多々あります。時代に合っていない手法で商品・サービスを提供している場合もあります。

時代の変化がどのように事業に影響しており、それに対して今後はどういった取り組みを行なっていくのか。

この視点で検討することが有効になります。

顧客ターゲット層

既存事業には顧客ターゲット層がある程度決まっています。今後この事業を時代に合わせた形で前へ進めていく際には、ターゲット層の変更が必要になるかもしれません。

例えば、中小のスーパーマーケットでは価格の安さだけでは人が集まりづらくなってきています。大手の価格の安さには対抗できないためです。あるスーパーマーケットでは、取り扱い商品をNB(ナショナルブランド)商品から、高品質で他店では取り扱っていないものへ切り替えることで付加価値を高め、顧客ターゲット層を変更しました。

このように、ターゲット層の変更をする必要があるかどうかも検討していきたいです。

収益改善の取り組み

多くの中小企業は赤字です。中小企業の7割は赤字であると言われています。また、資金繰りも厳しいところが多いです。

このような状況でバトンを受け取った後継者は、この状況をどう改善していくかが大きな課題になります。

収益面でどのように改善していけるか。そのためにどういった取り組みが必要になるのか。この視点が大事になります。

事業承継の際に事業計画を共有する

事業承継の際には、作成した事業計画を関係者と共有することもおすすめです。

従業員への共有

一番大事な関係者は従業員です。

事業承継で社長が交代するというのは会社にとって大きなイベントです。従業員も大きな影響を受けます。新しく変わっていくことへの期待感を持つ場合もあれば、どのような環境の変化が起きるか不安でいっぱいになる場合もあります。心理的に社長交代を喜ばない従業員もいるかもしれません。

こういった従業員の気持ちをひとつにまとめて新たな方向へ導くことが後継者の大きな役割になります。

この作成した事業計画を共有ツールとして活用することで、従業員との意識の乖離を少なくし、また従業員の不安な気持ちを解消する手助けにもなります。

金融機関への共有

取引のある金融機関とは密接にコミュニケーションを取っておきたいです。

金融機関も社長交代で事業が今後どうなるか期待と不安を感じています。後継者が事業計画を共有することで金融機関の理解も得られますし、ときには違った視点で助言をもらえることもあります。

また、こういった丁寧なコミュニケーションを図っていくことで、融資に対して協力を得られやすくもなります。

その他関係者への共有

この他にも、関係性が強い取引先、出資者、支援者等の関係者にも事業計画を共有しておくといいでしょう。

まとめ

後継者が事業を承継する際に、今後の事業計画を立てることは有益です。

自身の頭の中でイメージしていることを書面にすることで明確化できますし、他者との共有ツールにもなります。

中小企業の事業承継では、時代に合う変革や収益改善が課題になることが多いです。事業計画を作る際には、このような視点もしっかり盛り込んでいくといいと思います。

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35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家