こんにちは、3Cサポートの平山です。
助成金を活用している会社は多いと思います。助成金に興味のある社長も多く、「何か良い助成金あれば教えてください」と相談を受けることがあります。
助成金は上手に活用できると経営にはプラスになります。一方で、誘惑も多く使い方を間違えると自分たちの首を絞めることにもつながります。
今回は、助成金を申請する前に押さえたおきたい注意点を解説します。
*ここでは主に雇用関連の助成金に関して話を進めます
目次
助成金の申請:基礎知識
助成金の申請を考え始めたら、まずは簡単に助成金のことを理解しましょう。
「助成金」と「補助金」の違い
「助成金」という言葉や「補助金」という言葉があります。どちらも同じようなものとして認識しているかもしれませんが、少し違うので解説します。こんなもんだというくらいに認識しておくと、今後助成金や補助金を活用するときの参考になります。
助成金:要件さえ満たしていれば、ほぼ給付される 補助金:予算が決まっているため、申請しても採択されないことがある
助成金は申請するとほぼ給付されますが、補助金は給付を受けられないことがあります。
助成金は要件さえ満たせばほぼ通ります。一定の条件をクリアすればお金が入ってきます。助成金で対象となるもので多いのは、雇用(職場環境、就業規則など)に関する改善です。
一方、補助金は申請が通るとは限りません。厳しい審査があるためです。申請書(事業計画書等)がよく書けていないと採択されにくくなります。
助成金の種類
助成金では、雇用に関する改善が対象となることが多いです。国が提供している助成金以外に、都道府県単位で提供しているものもあります。
国の助成金
国の助成金はいろいろ種類があります。代表的なものとしては、「雇用調整助成金」、「キャリアアップ助成金」、「人材確保等支援助成金」などがあります。
都道府県の助成金
国の助成金以外にも、都道府県ごとでいろいろな助成金があります。東京など予算の多い地域は助成金も充実している傾向にあります。
助成金の調べ方
国の助成金(主に雇用関連)に関しては、厚生労働省のホームページに情報がまとまっています(雇用関係助成金検索ツール)。
地域ごとにどんな助成金が利用できるか確認する場合は、「J-Net21」というサイトがおすすめです。助成金以外にも補助金や融資などの情報も載っています。
助成金は何のためにあるのか?
助成金はどういう目的としているのかを押さえましょう。
国の政策として進めていきたい労働環境の改善があります。「働き方改革」というのは良い例です。
国の考える方針に沿って労働環境を改善すれば、お金を交付します
というのが助成金の趣旨です。
つまり、助成金には何かしらの労働環境改善が求められることになります。助成金欲しさで安易に飛びつくことは得策ではないということは押さえておいてください。
助成金の申請はラク!?
助成金の申請を自社で行うのか、外部専門家に依頼するのか迷う社長も多いと思います。
申請の難易度はどの程度でしょうか。
要件を満たせば交付
助成金の申請では、求められる要件を満たせば助成金が交付されます。
申請する助成金の公募要領をしっかり読み込み、要件が満たせるように申請していくことが求められます。
申請にかかる作業量
助成金の申請にかかる作業量は、助成金の種類によって異なります。
例えば、就業規則を作成することが要件に入っている場合、就業規則が既にあれば作業量は少なくなりますが、就業規則がない会社は一から作成しないといけません。外部専門家に作成を依頼することもできますが、費用はかかります。
日頃から勤怠簿等の労務管理がしっかりなされている会社は申請準備もスムーズにいきますが、そうでないと作成する資料も多くなります。
申請に必要な専門知識
助成金の多くは人事担当者で申請可能です。仮に申請書類に不備があったとしても、助成金の事務局が丁寧にサポートしてくれます。
ただ、助成金の申請自体は誰でもできるのですが、本当に会社にプラスになるかどうかを考えるためにも人事・労務の専門家に相談することをおすすめします。会社の方向性と異なることや、長期的に見てリスクが発生することも考えられます。
助成金の申請で陥りやすい落とし穴
助成金の申請で陥りやすい落とし穴がいくつかあります。
目先の利を追いすぎると…
助成金の多くは要件さえ満たせばお金が交付されます。就業規則の一部を変更するだけだったり、ちょっとした労働環境の変更だけで済んだりと、要件のハードルも低いことが多いです。
申請にかかる作業量や、要件のための取り組みの割に、交付金額が大きいということもあります。
簡単に交付されるからこそ、落とし穴もあります。
それは、助成金のために何かを変更したことで、数年後に自社の首を絞めるケースがあるためです。
ある会社の話です。
(定年65歳を就業規則に定めたケース) 助成金の申請要件で「正社員の定年退職の年齢を65歳に引き上げ、就業規則に規定する」というものがあったため、助成金を得るために就業規則を変更しました。社長としても、社員が65歳まで働き続ける環境は大事だと思いました。 数年後、会社の業績が悪化しました。固定費を削減しないといけない中で、この65歳定年という自社のルールがあるため、人件費の削減がしにくくなりました。60歳定年で継続雇用の制度を設けていた方が、業績悪化時に対応しやすかったと社長は悔やんでいました。
不正になることも
よくあるケースとして、申請要件を満たすためにちょっとした変更を行ったことが結果として不正となってしまうなどです。
雇用調整助成金で不正な申請があったという報道が多くあります。悪質なものもあれば、ちょっとした出来心でというのもあると思います。
会社内部のことで外部からは見えにくい部分です。タイムカードを押さずに残業する、有給休暇取得日数をごまかす、リモートワークのために助成金で購入した自宅用の機器を事務所で使用しているなど。
会社の情報を国に渡している
助成金の申請では、会社での労務関連の様々な情報を提出することになります。
ある労務の専門家(社会保険労務士)がこう言っていました。
本来なら国に開示する必要のない情報まで、助成金の申請では提出しないといけない。国に会社内部の実態を把握されることにつながる。リスクも考えたい。
立ち止まって考えてみたい視点だと思います。
助成金の申請を外部へ依頼するなら
助成金の申請を自社で行うこともできますが、外部専門家に依頼することも有効です。
社会保険労務士
労務の専門家は社会保険労務士です。助成金申請に詳しい専門家も多く、社会保険労務士に相談するといいでしょう。
適任者かどうか見極めるポイント
助成金の申請を依頼するのに、どの社会保険労務士が適任かどうか。次のようなポイントで判断することをおすすめします。
リスクの説明
助成金を申請するにあたり「どのようなリスクが想定されるか」をしっかり説明してくれる専門家を選びましょう。
目の前の助成金の申請だけを考えず、その後の経営にどのような影響が出るかも考えていきたいです。
会社の状況を踏まえた提案
会社によって課題が違います。その課題を把握した上で提案することができる専門家を選びましょう。
助成金は取り組みやすいものが多いため、会社の実情に合っていない助成金を勧める専門家もいるようです。
まとめ
助成金を申請する際に押さえておきたい注意点をご紹介しました。
私は雇用関連の助成金は専門外なのですが、よくご支援先の社長から助成金に関するご相談を受けます。以前会社にいたときには自身で助成金の申請をしたこともあり、いろいろと感じたことをまとめてみました。
会社の実情に合った助成金を活用できると、会社の運営に大きなプラスになります。助成金申請を機に労働環境の改善に取り組むということも有益です。外部の専門家の意見も取り入れながら助成金を活用して欲しいと思います。