事業承継後に後継者が直面する古参社員との関係性|社長がどうサポートできるか

こんにちは、3Cサポートの平山です。

事業承継を考え始めたときには、後継者をどう育成していくかということが課題になります。

▼参考
事業承継までにどう社内の後継者を育成するか|リソースの限られた中小企業

そして、社長の親族または従業員が後継者として事業を引き継ぐと、必ずといっていいほど直面する課題もあります。

それは、会社に何十年と勤務してきた社員の方たち(以下、「古参社員」)との付き合い方です。

今の事業を承継した社長であれば理解できる部分かと思います。

後継者にとっては悩みの種になりがちな、古参社員との関係。社長がどうこのことに対して後継者をサポートできるのかを考えてみたいと思います。

目次

後継者がいずれ悩む古参社員との付き合い方

後継者が事業を引き継ぐとさまざまな課題に直面します。その中でも、頭痛の種になるのは、長年勤務している古参社員との付き合い方です。

年齢

後継者と古参社員の年齢がどの程度開いているかによっても変わります。大抵の場合、後継者は古参社員より年下のケースが多いです。

日本人は人付き合いをする際に年齢を尊重します。後継者としては、年齢が上の、しかも長年会社に勤務している社員へどう対応していくか悩むことが多いようです。

仕事の進め方の違い

年代が異なれば、仕事の進め方にも違いが出てきます。

長年勤務している古参社員には、慣れている仕事の進め方があります。若い世代からすると時代遅れに見えたり、効率が悪いと思うことだったりしても、古参社員にはそのやり方が一番心地良いということがあります。

例えば、古参社員が手書きで書類を作成している場合があります。後継者は、「パソコンで作成すれば社員間で共有もしやすく、データとしても保存しやすいのにな」と思います。

DX化が叫ばれている中で、できるだけデジタルに置き換えていきたいと考えるのも自然なことです。ただ、年齢が高い社員はデジタルが苦手なこと多く、突然デジタル化しても業務に支障が出ることが考えられます。

これ以外にも、仕事の進め方が後継者の考える進め方と大きく乖離する場合もあります。そのときに、後継者の進め方に合わせてもらうのか、古参社員の進め方を尊重するのか判断する必要がでてきます。

指示

後継者が組織を率いる立場になれば、当然社員に対して業務に関する指示を与えることになります。

古参社員は役職に就いていることも多く、直接指示を与えないといけません。

後継者が社長になる前は、この社員は上司や先輩だったかもしれません。そういった人たちへどのように指示を出していくか、後継者が悩むポイントになってきます。

反発

古参社員と良好な関係で業務がスムーズに回るのであれば問題ないのですが、古参社員から反発が出ることも往々にしてあります。

今まで自分たちのやり方で仕事をしていたのに、自分より年下の後継社長がいろいろ指示してくる。

反発したくなる気持ちも理解できます。

ただ、後継者からすると、この反発は精神的に厳しいものになります。会社を良くしようとして進めていればいるほど、古参社員からの反発は心に重くのしかかります。

後継者によっては、こういった反発に対し苛立ち感情を露わにするかもしれません。そして、古参社員との関係をこじらせることにもつながってしまいます。

また、後継者の方針を支持している社員がいた場合、その社員を優遇する傾向も出てくるため(無意識のうちに)、余計古参社員との溝も深くなることにもつながります。

予想される後継者の選択

このように古参社員との関係性で悩む後継者は、これをどう乗り越えていくのか。考えられる選択肢がいくつあります。

受け入れ

今の状況を受け入れて、古参社員とどうにかうまく付き合っていく。

受け入れのために後継者に求められるのは、古参社員とのコミュニケーションを密に相互理解を深めていくことになります。

これはなかなかできることではありません。まだまだ人間的にも未熟な後継者にとっては、高いハードルかもしれません。

配置転換

古参社員を配置転換することで、経営に影響が出ないようにする。

古参社員との相互理解を深めるには時間がかかります。配置転換が手っ取り早いと考えるかもしれません。

ただ、社員数の少ない中小企業では、配置転換だけでは解決できないこともあります。

解雇

古参社員に会社から離れてもらう。

あまりにも後継者の方針に古参社員が反発するようなら、会社から離れてもらうことも選択肢のひとつです。

ある2代目社長(A社長)の話です。

A社長は2代目としてスーパーを父親から引き継ぎました。当時古参社員が数名おり、全員父親を慕って仕事をしていました。息子であるA社長が引き継いだあと、この古参社員はみなA社長の方針に反発したそうです。これではスーパーの運営に支障が出ると判断したA社長は、この反発した古参社員全員を解雇しました。結果的に運営がスムーズになり、社内の雰囲気も明るく変化していきました。

解雇は避けたいことではありますが、会社の方針に合わない人には離れていただくことも選択肢としては必要になります。

社長は後継者へどうサポートできるか

社長が後継者へバトンタッチしたあと、大切にしてきた社員と後継者の間で問題が起きることは避けたいところです。

どう後継者へサポートしていけばいいのでしょうか。

古参社員との対話

古参社員へ一番影響力を有するのは社長です。社長があらかじめ古参社員と、事業承継のこと、後継者のこと、今後の方針変更のこと、後継者をサポートしてほしいことなどを話す機会を設けることをおすすめします。

古参社員としても、知らない間に物事が進み環境が突然変わると動揺します。そこが会社への不信感にもつながりますし、後継者への反発にもつながる要因になります。

事前の配置転換

古参社員の特性を熟知しているのも社長になります。後継者との関係がうまくいかないと予想されるのであれば、事前に配置転換をしておくのも有効な手段です。

前述のスーパーのA社長は、この2−3年内に自身の息子へ事業承継を予定しています。古参社員と息子の間で問題が発生することが予想できるため、今の段階から古参社員の配置転換を進めているようです。

後継者との対話

後継者は、事業を引き継いだあとにこのようなことで悩まされる日々が来るとは想像していない可能性があります。

社長としては、後継者に対してこういった課題が発生する可能性があることを事前に話しておくことも有効です。その上で、後継者がどのように古参社員との関係性を構築していけばいいかをアドバイスすることもできます。

任せたら口出ししない

社長が後継者にバトンタッチしたあとは、基本的には口を出さない方がいいと思います。

後継者から意見を求められたらアドバイスは有効ですが、一度任せたのなら、古参社員への対応に対しては後継者のやりたい方法に委ねましょう。

今後数十年とこの会社をリードするのは後継者なので、経営しやすい体制を構築することも後継者の大きな仕事のひとつになります。

社長が後継者の決めた人事に口出しをしてうまくいかなくなるケースも多々見受けられます。

まとめ

事業承継をしたあとに、後継者が直面する課題「古参社員との関係性」に関して社長として何ができるかを考えてみました。

古参社員には、古参社員なりの不安もあります。思いもあります。後継者が学んでいかないといけないことや、古参社員への理解も必要です。

ただ、後継者が取り組むべき課題は他にたくさんあります。どう会社を発展させていくかに注力したいときに、会社内部の人間関係で悩むというのは避けたいです。

社長としても、関わるすべての人に幸せになってもらいたいという気持ちも強いと思います。そのためにも、社長がどのように後継者をサポートしていけばいいかを考えていきたいです。

事業承継・M&Aのご相談

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、自身の経験をもとに東京都を中心に中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/M&A支援機関登録/やまなし産業支援機構派遣登録専門家