『コメ高騰の深層』(山下一仁著/宝島社/2025年)

昨年から起きている米価格の上昇の背景に何があるのか。
そういったことを知りたくて本書を手に取りました。
戦前からこれまでにどういう農業政策が行われ、それにどう関係者がかかわってきたのかが説明されています。
著者の山下さんは、農水省、JA農協、自民党農林族議員の共同体を「農政トライアングル」と呼んでいます。
「この共同体は零細なコメの兼業農家を維持する点で共通の利益を持っている。そのコアとなる手段が減反・高米価政策である。(中略)高米価は農政トライアングルの核心的利益であり、減反政策はその核心的政策である。」(p. 4)
減反・高米価政策は零細なコメの兼業農家が減るのを防いできたといいます。
そういった農家が多いほど、JA農協の金融事業が潤うからです。
「高米価政策は主業農家の規模拡大を阻害し、コメ農業の効率化と安価な主食の国民への供給を阻害した。(中略)食料安全保障に不可欠の農地資源が転用と耕作放棄で大量に失われた。農家は豊かになったが、農業は縮小し、国民のための食料安全保障は大きく損なわれた。」(p. 56-57)
昨年からのコメ騒動に関しては、23年産米の生産量が猛暑により減少したことが要因でした。
60万トン近くの量のコメが消えた、と話題になっていました。
コメが減少したということを認めたくない農水省は「卸業者にコメ不足の責任を押し付け」(p. 74)ました。
どこかの業者が隠し持っていると。
でも、コメのトレーサビリティ法により、生産から提供まで各段階を記録する法律があるため、農水省はコメの流通を把握できたはずだと山下さんは指摘しています。
「令和のコメ騒動の原因を作ったのも事態をさらに悪化させたのも、農水省をはじめとする農政トライアングルである。」(p. 4)
「農政トライアングルの核心的政策」である減反の廃止を著者は主張しています。
「減反は、当初は食糧管理制度の下で政府が買い入れるコメの量を制限するために始まったが、今はJA農協という農業団体の利益(農業ではなく金融部門での収益確保)のために行われている。」(p. 27)
形式上は減反政策は終わっているように見えますが、実質的には終わっていないようです。
補助金等で価格維持や生産抑制のインセンティブが働くためです。
この減反政策が日本のコメ生産を悪化させてきたと。
「減反補助金を負担する納税者、高い食料価格を払う消費者、取扱量の減少で廃業した中小米卸売業者、零細農家滞留で規模拡大できない主業農家、輸入途絶時に食料供給を立たれる国民、すべてが農政の犠牲者だ。」(p. 146)
本書でコメ生産に関する背景の一旦を知ることができました。
知識が全くなかったので勉強になりました。
と同時に、まだ続いている米価の高止まりに関し、政府がどういう対策を取っていくかも注意深く追っていきたいと思いました。
本書のおかげで、コメに関するニュースに関心を持って接することができそうです。
