『金利上昇は日本のチャンス』(中空麻奈著/ビジネス社/2025年)

金利が上がる状況になってきました。
本書では、これまでの金融政策を振り返り、マーケットの歪みや財政難といった問題点を深掘りし、今後の日本の課題を提示しています。
著者は、クレジットストラテジストの中空さん。
情報番組に出演していると耳を傾けたくなる方です。
金利上昇で気になるのは国の財政状況です。
先日の参院選でも、物価高対策として給付金や消費税減税が焦点になりました。
個人的には、本当にこれでいいのか?という漠然とした不安を抱えながら投票をしました。
日本の債務残高は1100兆円を超えており、GDPの2倍の額です。
お金をばら撒いている余裕があるのだろうか。
本書では、財政再建の必要性をこう指摘しています。
「なぜ財政再建が必要なのだろうか。シンプルに言うならば、適正な水準の債務を超えてしまうと、持続可能ではなくなるからだ。」(p. 151)
そして、こういう捉え方をしています。
「緊縮財政は財政健全化ではない点を理解しておくべきだろう。財政健全化とは、歳出そのものを大幅にカットするのではなくワイズスペンディング、すなわち『賢く使いましょう』という持続的な財政を目指すことである。」(p. 119)
緊縮財政と積極財政のどちらを重視するかと考えがちになっていたので、こういう捉え方は私には新鮮でした。
必要なところにしっかりお金をかける。
必要のないところを省く。
その上で、財政再建化を図っていかなければいけない。
「財政再建のカギを握るのは、サイレントマジョリティだ。」(p. 154)
表立って発言はしないけど、バランスの取れた良い判断をする大衆のことです。
サイレントマジョリティが政治を動かせるかにかかっていると指摘しています。
今朝(2025/7/25)の日経新聞で、中空さんのコラムが出ていました(『エコノミスト360°視点 奮起せよ サイレントマジョリティー』)。
参院選でSNSの果たす役割が大きくなりましたが、SNSは極端な意見も多く、そこに引っ張られる人も多い。
SNSの声の大きさで政策が決まっていくとしたら、それは日本のためにならない。
そのためにも、サイレントマジョリティが意見を出すことが大事だと述べています。
コラムの最後でこう締めています。
「サイレントマジョリティーよ、もうサイレントはやめないか。」
本書では、これからの日本の課題を7つ挙げています。
- ゼロ金利解除のソフトランディング
- インフレ・物価高への対応
- 低成長からの脱却
- ユニコーン企業を育てる
- 高齢者のマーケットを開拓する
- 子育てしたい人たちが子どもを持てる環境と整える
- 財政の健全化をはかる
改めて考えさせられた点として、「低成長からの脱却」のためには、価格転嫁を進めること、生産性の低い企業の退出が欠かせないと指摘しているところです。
中小企業支援をしている立場では、悩ましいテーマでもあります。
物価高になっているため、価格転嫁でお客さんが離れるリスクが高い業種もあります。
生産性の低い企業の退出というのも、頭では大事であると理解しつつも、心情的には厳しいものがあります。
マクロで見たらあるべき方向性ですが、ミクロで見るとなかなかそうも言えない。
これらがスムーズに進むような社会的な仕組みをどう作れるかということでしょうか。
本書は読みやすく、学びも多かったです。
最後に著者が45歳〜65歳の人たちにむけて、「日本をともに良い方向に変えよう」(p. 213)とメッセージを送っているところが印象に残りました。
