『トリニティ組織』(矢野和男著/草思社/2025年)

「ウェルビーイング」に関して考えを深めるために本書を手に取りました。
日立製作所フェローの矢野和男さんの著書で、21年間にわたるデータ解析から導いた組織論です。
多くの組織では「V字」型の構造になっているといいます。
V字とは、たとえば自分とAさん、自分とBさんというつながりがあるとき、AさんとBさんのつながりが希薄の状態のことです。
同じチーム内であっても、こういうことは多々見受けられます。
縦型の分業体制が主流となっている現在の組織では、こうなるのは必然であるといいます。
「V字」は孤立を招く要因となります。
矢野さんの検証により、「三角形」の構造が幸せと生産性向上につながることが証明されました。
三角形とは、AさとBさん「も」つながりが強い状態です。
「三角形の人間関係が多い組織では、情報共有がスムーズで、アイデアやモチベーションが自然に高まり、結果として人々の幸せと生産性が同時に向上します。」(p. 3)
興味深いのは、コミュニケーションの頻度が増えればいいというわけではないということです。
また、つながりの数の大小も幸せや生産性に影響する要因とはならないとも指摘しています。
三角形が周りに多くあるかどうかが大切。
そして、V字があること自体は構わないといいます。
「自分とよく会話する相手同士で三角形のつながりを持ちながら、たまに会話する相手も適度に持つ。強い三角形と、弱いV字を両方持つことが、幸せなつながりの理想形です。」(p. 83)
三角形のつながりが多いほど、集団の「身体運動」はシンクロし、「心理状態」も前向きになる。
「つながり・身体運動・心理状態という3者は、三位一体の現象と捉えるべきだということです。」(p. 115)
シンクロするほど、フロー状態を作りやすくなると指摘しています。
こうなると挑戦する集団にもなる。
では、どうすればリーダーは三角形を増やすことができるのか。
「V字になっている3人に、互いに知恵を出して協力しないと答えがでないような仕事を与えることです。」(p. 178)
この一文を読んだとき、私が支援に入った事例を思い出しました。
3名のチーム(リーダーAさん、Bさん、Cさん)で、リーダーAさんとBさんはコミュニケーションを頻繁に取っていましたが、それぞれCさんとの対話は希薄でした。
3名の意思疎通を円滑にするため、腹を割って本音で意見を出し合う場をつくりました。
そして、3名で経営改善の策を練るよう促しました。
これをきっかけとし、このチームの情報共有レベルは格段と上がり、アイデアも出るようになりました。
この事例では、3人で「互いに知恵を出して協力しないと答えがでないような仕事」をすることで最終的には「三角形」をつくることができました。
こういう取り組みが大事だと強く感じます。
この組織論に共感します。
私の失敗事例とリンクしているからです。
プロジェクト管理として関わっていた際、私はプロジェクトオーナーである社長とプロジェクトメンバーの間の位置にいる状態になっていました。
私はそれぞれとコミュニケーションを密にしていましたが、社長とメンバーの間では、私を通すか私を含むコミュニケーションとなっていました。
V字の構造だったわけです。
コミュニケーションがうまくいっていなかったため、社長からメンバーに対する不信が高まり、結果的にこのプロジェクトはメンバー変更という形となり、私も外されました。
あのときに三角形にできていたら、おそらくもっと違う展開になっていたのだと思います。
良い本でした。
本書での学びを今後の組織支援に活かしていきたいと思います。
