『これがすべてを変える―資本主義VS.気候変動 下』(ナオミ・クライン著/岩波書店)
昨年ナオミ・クラインさんの『ショック・ドクトリン』を読み、内容に衝撃を受け、著者の別の本も読んでみたいと思い手に取りました。
こちらの本では、気候変動という危機と、資本主義という論理との間でどのようなことが起きているかが語られます。
上下巻あるうちの下巻です。
上巻は気候変動対策を先送りにしてきた資本主義システムの暗い面が書かれており、読み進めるうちに気持ちも沈んでいくような感じでした。
下巻は、化石燃料の採掘に対して声を上げる地域住民の活動などが取り上げられており、どちらかというと前向きになるような内容となっています。
各地の「抵抗地帯」(採掘プロジェクトに抵抗している場所)、ダイベストメント運動(化石燃料企業からの投資撤退運動)と環境への再投資運動、採掘を禁止する地方自治体の法律、先住民などによる法廷闘争などに焦点が当てられます。
そして、現在の資本主義システム・経済システムとそれを支えている考え方を根底から変えない限り、気候変動問題を解決できないという結論に向かいます。
「気候変動との闘いは、世界観をめぐるはるかに広範な闘いの一部として捉えないかぎり、実を結ぶことはありえない。その闘いとは、何十年にもわたって攻撃にさらされ、無視されてきた共同性、共有、公共性、市民性、市民権という理念そのものを再構築し、再生させるプロセスにほかならない。なぜなら気候変動は、それに対処するには一度に多くのルールを破らなければならない、途轍もなく困難な課題だからである。」(p.616)
化石燃料が経済発展に寄与したことは間違いありません。
と同時に、莫大な利益を生み出す産業にもなっています。
どれだけ多くの人が地球を守ろうと声に出しても、すでに経済利益を享受している人たちは自ら進んでそれらを放棄することは難しい。
でも、気候変動対策は待ったなしの状況。
そういう状況の中でどう社会的に大転換していけるのか?
とてつもなく大きな課題に見えます。
それでも過去には奴隷制廃止運動など、大きな変革をもたらした運動はあるといいます。
「経済のパワーバランスの大転換が起きるのは常に、途方もない規模で社会が結集した結果だということである。」(p.614)
原書の刊行は2014年なので10年が経ちました。
今の状況はすでに「大きな変革」の中にいると言えるのでしょうか。
気候変動に関するニュースを見ない日はないし、各国もそれなりに取り組んでいます。
でも、国の指導者が変われば気候変動対策の方向性が変わり得る状況でもある。
「大転換しているのか?」は興味深い視点で、この視点を持ちながら世の中を見ていきたいです。
本書からは、気候変動問題の違った一面も見せてもらいました。
化石燃料が採掘されている土地に住む人たちの反対運動の事例が多く出ています。
気候変動というと大きな視点の話が多くなりがちになります。
このように採掘現場では何が起きているのか、住民の声とはどういうものなのか、そういったものに触れることができ勉強になりました。
引き続き気候変動に関する理解を深めつつ、次は「エネルギー」に関しても見ていきたいと考えています。