0998 『世界認識の再構築 十七世紀オランダからの全体知』

『世界認識の再構築 十七世紀オランダからの全体知』(寺島実郎著/岩波書店/2025年)

学びが深くなる本でした。

17世紀オランダという視点からグローバルヒストリーを描くことで、日本がどういう位置関係にいたかを様々な角度から浮き彫りにしています。

オランダという国が江戸期の日本へ大きな役割を果たしたことがわかります。

鎖国期でもオランダ(東インド会社)との交易は続いていました。

長崎出島からオランダを通して西洋の情報が流れ込み、西洋に対する関心が高まります。

そして、鎖国は中国からの自立であったとも寺島さんは指摘します。

「鎖国とは、近代化に向かう欧州との隔絶だけではなく、二〇〇〇年を超える中国の文明文化圏からの自立過程だったといえる。」(p. xi)

明治期になり、オランダからドイツへ傾斜していき模倣していきます。

富国強兵路線で自信をつけ、日清戦争に勝利。

ここから日本人は中国を下に見るようになります。

日露戦争で勝利したことで、「ロシアを侮る心理を生み」(p. 373)ます。

第一次世界大戦ではドイツに勝利します。

慢心した日本は第二次大戦へと突っ込んでいきます。

「日本は十七世紀オランダのDNAをも引き継ぐ資本主義の総本山・米国とアジアの『眠れる獅子』だった中国の連携に敗れ、三一〇万人の同胞の命を失い、国土は焦土と化した。(中略)敗戦のトラウマを引きずり、『アメリカを通じてしか世界を見ない』という視界に埋没し、今日に至っている。」(p. 373)

著者の寺島さんは「全体知」という言葉をよく使います。

物事をひとつの視点からではなく、さまざまな視点から総合的に理解していくことが大きな意味を持つ。

本書を読むと全体知とはどういうことかが伝わってきます。

歴史という流れの中で、今どこに向かっているかを一人ひとりが考えていかなければいけない。

そのときに「日本史」や「世界史」といった枠で歴史を見るのではなく、全体知として「グローバルヒストリー」を丹念に追っていくことが欠かせない。

本書で「八王子千人同心」が取り上げられています。

私は八王子で生まれ育ちましたが、言葉は聞いたことがありましたが、どういうものかは理解していませんでした。

1509年に徳川家康が江戸防衛として、武田家家臣団の小人頭衆を在郷武士団として八王子に移したことがはじまりです。

1792年にロシアからラクスマンが根室に来航し、幕府へ交易を申し入れます。

1804年にはレザノフが長崎へ来航し、国交と通商を求めます。

そんな時代背景の中で、八王子千人同心は1800年にロシアからの防衛のために蝦夷地に向かうことになります。

幕府直轄領の集団ということもあり、幕末には多摩地域から新撰組も生まれます。

八王子千人同心はこういう大きな歴史の絵のピースになっているということが理解できました。

ちなみに、甲州街道沿いに「千人町」という場所があります。

このエリアに八王子千人同心が住んでいたことから、この地名になりました。

本書では様々な参考文献も紹介されています。

個人的に関心を持った本・テーマは、八王子千人同心、本居宣長、新井白石、オスマン帝国、モンゴル、『科学革命の構造』(トマス・S・クーン)、『沈黙』(遠藤周作)などです。

来年はこのあたりも触れていきたいと考えています。

経営経験やコーチングの実践を通じて、深い対話により経営の選択肢を広げ、納得感のある意思決定をご支援しています。また、組織やチームの関係性を育む支援に取り組んでいます。3Cサポーター/中小企業診断士
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