『直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論』(野中郁次郎、山口一郎著/KADOKAWA)

組織開発に関する理解を深めていく中で、経営学者の野中郁次郎さんのいう「主観の真剣勝負のぶつかり合い」とは何かを押さえておきたいと思って本書を手に取りました。
野中郁次郎さんと、現象学の山口一郎さんの共著です。
前半は現象学について、後半は現象学的経営学について書かれています。
現象学というものにはじめて触れました。
「現象学は、自然にしろ、精神にしろ、その豊かさが失われないように、できるだけ『与えられているそのままに』、つまり『私たちの経験に現れているままに』受け止めることから始めようとします。この『経験に現れていること』を出発点にするので、この哲学は『現象学』と呼ばれるのです。」(p. 34)
そして、「感覚」という経験ありのままから出発します。
つまり、客観的な事実よりも、主観的にその人がどう物事を感じ、意味づけを行っているかに着目します。
創始者はドイツの哲学者エトムント・フッサール(1859-1938年)です。
野中さんはこの現象学の考えと経営には共通する点が多いといいます。
経営では「データ」を重視する経営判断が主流になりましたが、それだけでは不十分であり、「意味」も大事になります。
その数字などのデータに表れない部分にどれだけ気づけるかが経営者には求められています。
そして、知というのは現場で起きる。
マニュアル化されていない「暗黙知」をどれだけ共有できるか。
お互いに共有し合えてこそ知が浮き彫りになり、かつイノベーションも起きてくる。
それぞれメンバーは、主観であり、その主観をぶつけ合うことでイノベーションが生まれます。
「チームは対を基本とし、日常の仕事のなかで全人的対話に基づく真剣勝負によってこそ、革新的なイノベーションが実現できるという、知識創造の本質を示していると思います。最近、流行りのデザインマネジメントやブレインストーミングが見落としているのは、この点ではないでしょうか。」(p. 238)
本書の後半は、野中さんの「SECIモデル」を現象学でどう説明できるかという内容でもあります。
そこはわかりづらくあまり理解できていないのですが、ただ、あえてその程度の理解でいいかと思っています。
シンプルにこう理解しました。
みんなが忌憚のない意見を言い合える環境(心理的安全性)をつくり、全人格でもって真剣勝負でぶつかり合うことで、その先に新たな価値(イノベーション)を生み出す。
野中さんの言葉で印象的なのは、「真剣勝負」というところです。
人は物事を自分の主観でもって捉えています。
当然違う見方でもあるわけで、その主観をぶつけ合うことでイノベーションが生まれると。
そこには「真剣勝負」でないといけないということです。
最後にこう記してあります。
「人と人との出会いのなかでしか本物の時間は生まれないし、そこからしかイノベーションは起こらないのです。」(p. 363)
心理的安全性の中で、全人格的に、真剣勝負でぶつかり合う。
この考えをベースに、次は「対話型組織開発」というテーマを深掘りしていこうと考えています。
