『持続不可能な財政 再建のための選択肢』(河村小百合、藤井亮二著/講談社)

本書は国の財政に関する問題点と解決案を提示しています。
財政に関しての知識はあまりなかったので、しっかり学んでみたいと思っていました。
本書の立ち位置は、客観的・中立的な立場で国の財政を検証するというものです。
「我が国では、客観的かつ中立的な前提に基づく経済・財政の見通しが存在しない。だから国民のなかで危機意識が高まらない。これが、我が国で財政再建に向けた議論が一向に進まない、議論に手をつけるところにも至っていない1番目の理由であると思います。」(p. 7)
米国でも英国でも政府から独立した機関が財政見通しを公表していますが、日本ではそれがなされていない。
政府から出されるデータは、前提条件が甘いこともあり、客観的・中立的な前提がなされていないということです。
本書を読んでいくといかに日本の財政が厳しいか、それに対して真剣な議論が必要かが伝わってきます。
国の借金が大きい中、今後の財政運営が継続するための鍵となるのは「利払費」になるとしています。
現在の利払費は10.5兆円で、全体の予算の中の9%を占めています。
今後利払費が増えることが予測されている中で、どう財政運営をしていく必要があるのか。
本書では、財務収支を少なくとも30兆円規模で改善(削減/増税)する必要があると指摘しています。
プライマリーバランスの黒字化も出来ていない中で、利払費と債務償還費も含んだ黒字化が必要になるレベルです。
30兆円の収支改善のためには、あらゆる部門での改善が必要となります。
医療・介護、少子化対策、年金、地方財政、税制など。
本書はどこを改善していけば良いかの案を提示しています。
それらを見ていくと、国民の一定の負担はやむを得ない状態です。
現在国会で予算審議が行われていますが、本書はそういったニュースを見る際にも参考になります。
年収の壁、高校授業料無償化などテーマに上がっていますね。
個別のテーマはニュース番組でも政治家が出てきて議論していますが、全体的な財政運営という視点で政治家が国民に語っている姿はあまり見られません。
良いことばかり言っていますが、本当にこのままで大丈夫なのか不安に感じます。
年収の壁に関しては、個人的には、働いたなら税金や保険料を払うべきだと思います。
控除される水準が決まっていれば、それに合わせて働く時間を調整したくなりますよね。
公平にした方がいい。
あと、社会保険の第3号被保険者制度も早く見直した方が良いと思います。
サラリーマンの夫と専業主婦の妻を想定した制度ですが、現在では全体の1割くらいしかいないそうです。
その1割の人たちは保険料負担がないのに健康保険に加入でき、しかも年金も受け取れる。
不公平ですよね。
財政に余裕があるならまだしも、「持続不可能」な状態であるなら、こういうところは早く廃止していった方が良いと思います。
以前は財政再建に取り組む機運はありましたが、最近では財政運営のタガが緩み続けていると本書は指摘しています。
「完全にタガを外したのが新型コロナウィスル感染症の拡大によるコロナ禍です。財政法の要件を逸脱したような内容を盛り込んだ巨額の補正予算が編成され、財政規律は異常なほどに拡大しました。コロナ禍が過ぎ去った後も、財政規律が『平時』に戻る様子はありません。」(p. 282)
本書で何度か出てきて印象に残った表現があります。
「収入の範囲で生活する」
家庭で当たり前にやっていることを国でもやるべきですよね。
本書を読んだことで財政に関する大枠を掴むことができました。
