1086 がんもどき

夜にビールを飲んでくつろいでいるとスマホに着信がありました。

86歳の社長からです。

「誰にも聞けなくて、教えて欲しいんだよね」

「どうしました?」

「0.5分の1ってどういうことだったかなあ」

0.5分の1・・・1/0.5

最近使っていない脳みそのあの部分を刺激されている感じになり、ひとりで挙動不審者のように目を上下左右にぐるぐる回す。

ああ、そうか、あったあった、あれだ、あれ、10掛けるってやつだ。

「分母の0.5に10を掛ければ5になりますよね。分子の1に10をかければ10になるので、10割る5ですね」

「そうだよね、それでいいんだよねえ」

「はい、そうです」

「ということは、2ということだよね」

あ、ん????

2?

0.5分の1って2?

中学のころ数学を担当していた先生が好きでした。

先生が話し始めると、笑いが止まらなくなる。

「田中邦衛」そっくり。

「ここぉ〜のぉしきにぃ、これぇをいれぇてぇ〜」

もう気になって、気になって、授業に集中できない。

「みんなぁ、わかぁりますかぁ〜」

え、先生、わざとですか。

当時は『北の国から』は見たことありませんでした。

「田中邦衛」といえば、小堺一機さんの「ほたる〜うっ」。

なにもモノマネ番組を見なくても、学校に行けば「田中邦衛」に会える。

先生が入ってくる前から、我ら生徒はスイッチが入っているのです。

通っていた学習塾は2階建の昭和な小さな家でした。

1階に7〜8人入れる教室、2階に4~5名の小ぶりなスペースしかない。

先生おひとりで全ての教科を教えていました。

「がんも〜どき〜」

生徒が間違えると、ホワイトボードにがんもどきの形を描いていくのです。

「がんも〜どき〜」

リズムが心地よく、みんなで真似をしていました。

味なんてわからないのに。

中学3年のとき、2階建ビルの2階1部屋へ移転しました。

お駄賃もらって友人と引越し作業を手伝いました。

軽トラックの荷台に座り、冒険している気持ちになりました。

塾の名称は「グレイス」へ。

先生の娘さんが「恵さん」だから、この名前にしたそうです。

ひんやりする白い壁と窓ガラスに囲まれて、相変わらず聞こえてくる「がんも〜どき〜」。

最近、近くを通ったら「グレイス」の看板がはずされていました。

お疲れ様でした。

冬はおでんがいい。

一番好きな具は、がんもどきです。

経営経験やコーチングの実践を通じて、深い対話により経営の選択肢を広げ、納得感のある意思決定をご支援しています。また、組織やチームの関係性を育む支援に取り組んでいます。3Cサポーター/中小企業診断士
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