『文体のひみつ』(三宅香帆著/サンクチュアリ出版/2025年)

文体とはなにか?
前から疑問に思っていました。
「正しい」文体ってあるのだろうか、「良い」文体ってどういうことを言うのだろうか。
本書では、「惹きつける文体」、「先を読みたくなる文体」、「説得力を生む文体」、「記憶に残る文体」に分け、52の文章を例に文体を説明しています。
文章はリズムが大事。
リズムがあることで文章が面白く、読みやすくなるといいます。
語尾を揃えることでリズム感が出る。
村上春樹さんの『ダンス・ダンス・ダンス』の一節を例にしています。
一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。あんたの繋がりはもう何もなくなってしまう。永遠になくなってしまうんだよ。そうするとあんたはこっちの世界の中でしか生きていけなくなってしまう。どんどんこっちの世界に引き込まれてしまうんだ。
(p. 62)
「しまう」を続けることでリズムが出ています。
私にとってリズムといえばシェイクスピア。
シェイクスピアの文体は翻訳だとわかりづらいのですが、英語だと一定のリズムで書かれています。
タ・ター、タ・ター、タ・ター、タ・ター
このリズムが基本形なのですが、これが崩れるときは人物の感情が揺れ動くなど何かしらの作者の意図が込められています。
学生時代、その深さと面白さに魅了されたのを思い出します。
本書で52の例とともに文体を見ていくと、いろいろな表現方法があるのだということがわかります。
と同時に思ったのは、これはテクニックではないなと。
書く上で参考になる手法はあるにせよ、やっぱり、それぞれの書き手が長い間で積み上げてきたものが文体という形で表れてくるのでしょう。
だから文体の特徴もさまざまだし、それが書き手の個性ともいえる。
本書の良さは、そういった文章を客観的に分解し、「こういう特徴がある」と説明してくれているところです。
意識して読んでも気づけない部分を、ここまで解剖してくれている。
著者の三宅香帆さんは、とことん文章が好きなんだということがビリビリ伝わってきます。
ここまで突き抜けていると、読んでいて気持ちがいいです。
