『セカンド・チャンス』(スティーブン・グリーンブラット、アダム・フィリップス著/河合祥一郎訳/岩波書店/2025年)

「セカンド・チャンス」(人生をやり直すチャンス)をシェイクスピアの作品とフロイトの視点で考察しています。
前半をシェイクスピア研究の大家であるスティーブン・グリーンブラット、後半をフロイト研究の大家であるアダム・フィリップスが書いています。
ちょっと難解です。
やり直しの人生であるセカンド・チャンスを得るにはどうすればいいのか。
グリーンブラットは、セカンド・チャンスを得るためには心の準備以外にも状況による条件が必要であるとし、「偶然」の要素が大きいとしています。
一方、フィリップスはこんな問いを投げかけます。
「そもそも人間は自分で変わろうと思って変われるものなのか?」
私はこう受け止めました。
人は現状維持を好む傾向がある。
苦しいことはあっても、結局今が居心地が良い。
だから、グリーンブラットのいう「偶然」が必要ともいえる。
偶然が起きないと変わりづらい。
人は変わりづらいからこそ、まずは自分自身を知るところから始めないといけない。
そのためには他者との「対話」(フィリップス)が必要。
対話をすることは厳しいものでもあり、痛みを伴うことです。
でも、それがないと自分自身を知ることは難しいですよね。
その上で、日々の生活を「即興で楽しむ」(フィリップス)ことが重要であると。
必ずセカンド・チャンスが得られるとは限りません。
でも、そこに希望は見出したい。
私がとくに感じたのは、最終的には過去を手放せるかどうか。
しがみついているうちは、セカンド・チャンスは得られないのではないか。
しがみつくという選択肢はあってもいいと思うのです。
人は必要な時期に大事な人やものと出会う。
必ずしもそれが「準備していたから」(グリーンブラット)でもないと思います。
定めがある。
しがみついている時期というのは、そういう時であり、時間の経過とともに手放せるようになるかもしれない。
黙っていても縁は出てくるもの。
無理にセカンド・チャンスを追わなくてもいいと思います。
「いずれくるさ」と構えておけばいい。
ただ、日々を「即興」で楽しんではいたい。
「人生のファースト・チャンスは稽古(リハーサル)」(p. 278)
そして、セカンド・チャンスは「即興」です。
まさしく人生は舞台なんですよね。
舞台に上がるには準備は必要です。
そして、舞台に上がってしまったら、「その場」にいないといけない。
それが即興であり、「今、ここ」のあり方なんだと思います。
「『冬物語』がためになるのは、セカンド・チャンスとは何か−どうやって生まれるのか、どうやったら生み出せるのか−そして、リオンティーズがそうするように、誰かにそれをつかむよう仕向けるものは何なのかを考えさせてくれるからだ。」(p. 207)
セカンド・チャンスとは何か?
この視点でシェイクスピアの『冬物語』を読んでみたいと思っています。
