『知と愛』(ヘルマン・ヘッセ/新潮社/1959年・原著1930年)

ドイツの小説家ヘルマン・ヘッセの作品です。
読んだのは『シッダールタ』に次いで2冊目です。
少年のゴルトムントは修道院で年上のナルチスと出会い友情を築きます。
その後、ゴルトムントは修道院から脱出して自由を謳歌します。
多くの女性との情事を繰り返しながら場所を転々とする放浪生活。
出会った彫刻家のもとでは、芸術に目覚め彫刻を作ることになります。
そして、そこからも離れることに。
総督の愛人に惹かれ、情事を交わすまでになりますが、総督に見つかったことで牢獄に入れられます。
たまたまたそこに居合わせた司祭から救い出されます。
その司祭はナルチスでした。
その後、2人は同じ場所で暮らし、ゴルトムントは彫刻造りに励みますが、再びその土地を離れます。
数ヶ月後に体調が悪い状態でナルチスの前に戻ってきたゴルトムント。
死期を迎えていました。
そして、最後は、小さい頃のかすかな記憶にある「母親」に導かれながら死を迎えます。
ゴルトムントは衝動や本能で動くタイプですが、ナルチスは禁欲的で精神性を重視するタイプであり、お互いの特徴は真逆です。
ゴルトムントが母性や愛を象徴するとしたら、ナルチスは父性や知を象徴しています。
2人は固い友情で結びついており、最終的にはお互いを必要としている。
お互いにないものを補完し合っているかのようです。
ゴルトムントは自由な生活を送ります。
でも、本当は心の中では自由ではなかったのだろうと思います。
愛を求め続けていますが、一時の情事で愛は満たされず、常に追い求めていかないといけない。
彷徨い続けていつまで経っても自分の居場所が見つからない感じです。
彼の中で安らげるときは芸術に向かっているときだったのかもしれません。
自分の出会った人で大事だと思う人を自分の作品に重ねていきます。
人に対する気持ちは強い反面、素直になれない自分がいたのしかもしれません。
そういう人たちを作品にすることが自分の気持ちを沈めることにつながったのではないか。
そして、一番心を沈める大きな存在は母親であり、それがマリア像へと昇華していく。
そんなことを感じました。
寝る前に読む本として、4ヶ月かけてゆっくり読みました。
ヘッセの作品はいい子守唄になります。
また、頃合いを見て、彼の作品に触れたいと思います。
