0932 『共に変容するファシリテーション』

『共に変容するファシリテーション』(アダム・カヘン著/英治出版/2023年)

世界で著名な対話ファシリテーターのアダム・カヘンさんの著書です。

「変容型ファシリテーション」をテーマにしています。

変容型ファシリテーションは、「愛、力、正義を阻む障害を取り除くことに焦点を当てている」(p. 25)アプローチです。

ファシリテーションの種類を大きく分けると、「垂直型ファシリテーション」と「水平型ファシリテーション」があります。

垂直型ファリシテーションは、トップダウン型でグループ全体の利益に焦点を当てるものです。

水平型ファシリテーションは、ボトムアップ型でグループ参加者に焦点を当てるものです。

カヘンさんの提唱する変容型ファシリテーションは、この中間に位置し、時と場合によりどちらのアプローチも柔軟に使っていくものになります。

参加者とファシリテーターによるコラボレーションでは、5つの基本的な問いがあり、各段階でファシリテーターは参加者をサポートしていきます。

① 私たちの状況をどのようにとらえるか?
ファシリテーターは参加者が「主張すること」と「探求すること」ができるようサポートしていきます。

② 成功をどのように定義するか?
ファシリテーターは参加者が「結論を出すこと」と「先に進むこと」ができるようサポートしていきます。

③ 現在地から目的地までどのような道筋をとるか?
ファシリテーターは参加者が「予め道筋を描くこと」と「発見すること」ができるようサポートしていきます。

④ 誰が何をするかをどのように決めるか?
ファシリテーターは参加者が「指揮すること」と「伴走すること」ができるようサポートしていきます。

⑤ 自分の役割をどのように理解するか?
ファシリテーターは参加者が問題の「外側に立つこと」と「内側に立つこと」ができるようサポートしていきます。

私が一番印象に残った部分は、5番目の問いです。

ファシリテーションでも、組織開発でも、支援者として自分はどのくらいの距離感でいるべきかをよく考えます。

できるだけ客観的な立場に自分を位置付け、当事者の自発性を促そうとしてきました。

それは「外側に立つこと」であり、客観視できるというメリットはある反面、「状況が変わるためには、他の人々が変わらなければならないという傲慢な見方」(p. 202)になるリスクがあります。

「外から、そして上からというスタンスは、しばしば見下しや押し付けをうみ、その結果、相殺する反作用となる抵抗や不信感を生み出す。」(p. 214)

カヘンさんは、「外側に立つこと」だけではなく、ときには「内側に立つこと」も大事だと言います。

「もし、協力者として貢献したいのであれば、自分が現在とっている、あるいはとっていない役割や行動が現状を招いていることを認識し、責任を引き受ける必要がある。」(p. 214)

「内側に立つこと」というのは、自分も参加者と同じ目線で、同じ問題意識を、同じ感度で考えていくことでもあります。

そこには、自分も「責任を引き受ける」覚悟を持たねばならない。

日々の支援において、常に意識しておきたい部分だと感じました。

本書を読み終わり、支援者として柔軟に対応することが大切であるということが心に残りました。

こうあるべきだ、というスタイルや考え方があったとしても、それに固執してはいけない。

垂直型であれ、水平型であれ、どちらも行き来できるようにならないといけない。

バランス感覚が大事であり、支援者として柔軟性が必要となる。

逆に言うと、行き来してもいいんだ、と自分に許可したいなと思いました。

本書からの気づきは大きく、自分の支援者としてのスタンスが変わりました。

良い本に巡り合えたと思っています。

経営経験やコーチングの実践を通じて、深い対話により経営の選択肢を広げ、納得感のある意思決定をご支援しています。また、組織やチームの関係性を育む支援に取り組んでいます。3Cサポーター/中小企業診断士
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