『関係からはじまる』(ケネス・J・ガーゲン著/ナカニシヤ出版)

「関係」というテーマを考察している本です。
対話型組織開発の土台となる「社会構成主義」の考え方が書かれています。
境界画定的存在と関係規定的存在とがあります。
境界画定的存在とは、自分と他者を切り離した存在として捉える考え方です。
私がいて、あなたがいる。
現代の考え方は境界画定的存在が前提にあります。
関係規定的存在とは、すべては関係の中で存在するものであると捉える考え方です。
著者の提案は、世の中の捉え方を、関係規定的存在として捉え直そうというものです。
「私たちはともに構成する世界の中に存在している。私たちはつねに関係の中からあらわれ、すでに関係の中にいる。」(p. 3)
「個人にせよ、コミュニティ、政党、国家、宗教にせよ、人間を、分離した、あるいは境界画定的な単位という観点からのみ捉えようとすれば、私たちの将来の幸福を脅かすことになる。(中略)このように分離を基本とする現実理解に対するもっとも有効な代替案となるのが、関係規定的存在という考え方である」(p. 477)
境界画定的存在という考え方をする現代では、自己と他者が分離されているため、自己評価(自尊心)を気にすることになります。
そして、他者の失敗も願うという心理状態にもなります。
相手と価値観や意見の相違がある場合、非難、排斥、無視、疑いなどが起きます。
たとえ価値観が異なっていても、相手との絆が生まれると、そういった問題は乗り越えられる。
でも、絆が結ばれることで、新たな「私たち」と「彼ら」が生まれてくる。
「絆で結ばれた関係は、単に、ある境界画定的存在を別のものに置き換えるだけである。この拡大した境界画定的存在は、新たな危機を生み出すだけでなく、個人主義の伝統に内在する欠点を危険なまでに強化することになる。」(p. 233)
我々の思考、意図、経験、創造性は関係の中で生まれるものであり、他者と切り離された自身の心から出てくるものではない。
関係規定的存在という考え方をベースにすることで、組織の変革を促すことも可能となります。
まずは他者を肯定すること。
「人は肯定されることで、アイデア、価値観、考え方を共有しようとするようになる。このようにして、組織の有する可能性はより豊かになり、その壁の外側にある意味のネットワークともより緊密に結びつくようになる。」(p. 386)
そして、意思決定する際は、協働的なプロセスを経ることが大事となる。
「できるだけ多くの人々が参加できる対話を生み出すこと。たった一人で、机上で自律的な決定を下している経営者は、組織の生命を危険にさらしていることになる。」(p. 395)
組織内で人を評価する際、業績で評価をすることは境界画定的存在を前提にしており有害であると、著者は指摘しています。
評価の軸を「関係」にすることが課題である。
本書では、これ以外にも日常生活、教育現場、セラピー、道徳といったテーマでも関係規定的存在の考え方で捉え直す試みをしています。
全体を通して、「関係」を軸に物事を見ていくことの有益さや魅力を感じることができました。
最後に気がついたのは、ここでいう「関係規定的存在」というのは、仏教でいう「自他一如」と同じことなんだということです。
そういう視点で他者との対話ができるようになると、自然と今までにない変化が出てくるのではないだろうか。
お互いが幸せになれるのではないか。
そんなことを感じました。
また、これらの考え方が、対話型組織開発のベースとなっていることも腑に落ちましたし、なぜ自分がこの分野に興味が湧くかも段々とわかってきたような気がしています。
