『シッダールタ』(ヘルマン・ヘッセ著/高橋健二訳/新潮社)

ヘルマン・ヘッセの作品をはじめて読みました。
本作品は、釈迦の出家以前の名でもあるシッダールタをモデルとし、悟りに至るまでの体験を描いています。
若い頃は出家していたシッダールタですが、川を渡ったところの町である女性に出会います。
次第に欲まみれの生活にどっぷり浸かっていきます。
しばらく経ったあと、その生活から抜け出そうと、川まで戻ります。
そこで、以前も川を渡してくれた、渡し守のヴァズデーヴァと再会します。
ヴァズデーヴァはシッダールタに、「すべては川が教えてくれる」と言います。
2人は川のそばで共に生活するようになります。
心が穏やかになり悟りの境地にいきつきそうになったとき、以前共にした女性と再会します。
2人の間でできた子どもも連れています。
女性が突然亡くなり、子どもと一緒に暮らすことになりますが、言うことを聞かない子どもに対してシッダールタの心はざわめきます。
子どもはシッダールタとの生活から逃げ出し、最終的にシッダールタも現状を受け止めていきます。
かたわらには、ヴァズデーヴァがいて、川がありました。
悟りの境地に達したシッダールタを見て、ヴァズデーヴァはその場から姿を消します。
老人になったシッダールタのもとには、多くの人が相談に来るようになります。
ある日、若い頃仲の良かった友人ゴーヴィンダがシッダールタのもとを訪れます。
沙門として長年修行を続けてきました。
再会したとき、そこには悩みが抜けきれない自分とは対照的に、聖人の域に達しているシッダールタを見ます。
優しい文章で、穏やかな気持ちになれる読書でした。
私が一番印象に残ったのは、「川が教えてくれる」という一文です。
「傾聴することを川が私に教えてくれた。おん身もそれを川から学ぶだろう。」(p. 136)
渡し守がシッダールタへ言うセリフです。
この文を読んだとき、稲妻が走ったような衝撃を受けました。
傾聴することすらも、川が教えてくれる。
素敵なセリフです。
川の流れをぼーっと見ていたくなります。
ヘルマン・ヘッセの他の作品も読んでいこうと思っています。
