『遺伝子−親密なる人類史(上)』(シッダールタ・ムカジー著/早川書房)

ピュリッツァー賞受賞者のシッダールタ・ムカジーさんの著書です。
遺伝子がどのように発見され、遺伝学としてどのように発展してきたかがわかりやすく書かれています。
上下巻あるうちの上巻です。
19世紀後半にグレゴール・ヨハン・メンデルがエンドウの実験で遺伝の法則を発見しました。
10年近く費やした実験結果を論文の形で発表しますが、陽の目を見たのはそれから数十年後のことでした。
遺伝子を考える過程で、「最良の」特性を持つ人間を残していくという優生学が生まれます。
その思想は精神疾患を持つ人々や身体に不自由な人たちを虐げることになり、それがエスカレートしてナチスによる虐殺へと繋がっていきます。
その後、DNAの仕組みなど、少しずつ遺伝子のメカニズムが解き明かされていきます。
安全性に関する議論もありました。
1973年に科学者が集まり会議を行いました。
遺伝子組み換え技術の危険性と利点が話し合われ、安全性に関する問題が解決されるまでは実験を延期するべきだという提案がなされました。
この部分を読んでいて、現在のAIに関する流れと似ているなという印象を受けました。
科学の進展に伴い倫理や安全性といった部分も議論のテーマになる。
行きすぎていると感じたら一旦立ち止まりリスクを整理する。
そしてまた歩んでいく。
その繰り返しなんだろうなと。
遺伝子に関する本を初めて読みました。
本書は読みやすく、時間を経つのを忘れるくらい、とにかく面白い。
遺伝子の持つ神秘性や生物の凄さにも引き込まれますが、それを解明しようとする人たちの歴史も興味深いです。
下巻は1970年以降のお話になります。
