『GDP <小さくて大きな数字>の歴史』(ダイアン・コイル著/みすず書房)

GDP(国内総生産)とは何か。
GDPがどういう背景で作られ、何を課題とし、どこを改良していく必要があるのかなどが書かれています。
読みやすい本で、GDPの歴史もわかります。
GDPは、1930年代の大恐慌と、その後の第二次大戦がきっかけで作られました。
印象的だったのは、GDPは元々戦争目的のために設計された指標だったというところです。
戦争を計画するためにはあらゆる統計データを基にしないといけない。
1941年、イギリスが現在のGDPの原型となるものを作りました。
GDPは国ごとに比較も行われており、数値が出る度に一喜一憂します。
現在日本は世界第4位、今年はインドに抜かされるかもしれません。
ただ、GDPという指標は課題も多い。
GDPの基になるデータをどう取ってきて、どのようにまとめるかが非常に難しい。
「GDPは世の中に存在する製品の多様化を捉えられないので、経済成長を過小評価している。イノベーションやカスタマイズをうまく評価できず、相当に大きな価値を見逃しているのだ。」(p. 130)
数年前の機器よりはるかに進化した機器が同水準の値段で売られている場合、統計では価格しか把握できず、技術発展という付加価値はGDPには反映されません。
サービス部門をどう捉えるかも難しい。
サービス部門はモノを作るわけではないので、何をもって「生産性向上」と言うのかも曖昧です。
金融をGDPにどう含めるかも議論になっています。
2008年の金融危機後、金融セクターのGDPへの寄与度が過大評価されているという批判もあります。
投機やマネーゲームといったものがどれだけの付加価値を生んでいるのか。
GDPは不完全である。
「私たちはGDPという実体がどこかに存在し、必要なのは測定の精度を上げることだというような錯覚に陥っている。だが測定の対象がただの概念にすぎない以上、正確な測定などというものは本来ありえない。」(p. 145)
著者はこう指摘します。
「経済の変化によって、GDPと人々の豊かさとの隔たりは以前よりも大きくなった。(中略)GDPが人々の豊かさを十分に捉えられなくなりつつあるということだ。」(p. 147)
GDPという指標は経済の形に合わせて改善されていくのでしょう。
何を豊かさとするのか。
経済学者や政治家は把握していることかもしれませんが、国民レベルでは、まずはGDPという指標が不完全であるという認識から始める必要があると感じました。
