『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』(リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン著/日経BP)

行動経済学は興味がある分野で、この本は前から読んでみたいと思っていました。
「ナッジ」について書かれています。
ナッジとは、「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人びとの行動を予測可能なかたちで変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素のこと」(p.31)です。
アーキテクチャーは「設計」という意味で、どのように選択肢を提示したら相手に選んでもらえるかを考えていきます。
例えば、複数商品が陳列されている際に、「おすすめ商品」となっていると選ばれやすくなります。
ナッジとは英語で「軽く押す」、「そっと促す」とう意味があります。
本書では、ナッジの例として、貯蓄の奨励、保険、臓器提供、温暖化対策でどのように取り入れることができるかも示されています。
ナッジを取り入れる際は、できるだけシンプルにすることが大事だと言います。
何かを選ばせる際に、デフォルト設定を推奨の選択肢としておくと、相手はそのままで済ませる傾向が高まります。
ECショップで何かを購入すると、デフォルト設定で「レビューを書く」にレ点が入っていることがあります。
このまま購入に進むとレビュー依頼のメールが飛んできます。
購入者側としては嫌ならレ点を外せば良いのですが、外すことを忘れることもありますし、外すことが手間だということもあり、そのまま購入に進みがちになります。
販売者側からするとできるだけレビューを書いてもらいたいので、この選択肢をデフォルト設定にしておくことで一人でも多くの人にレビューを書いてもらおうとします。
本書で印象に残った点として、情報開示の効果があります。
温室効果ガス削減のために情報開示は有効であると著者は言います。
「政府は温室効果ガス排出目録(GGI)をつくって、重要は排出事業者に情報の開示を義務づけるべきである。(中略)この種のリストはそれだけでは大きな変化を生まないかもしれない。だが、このようなナッジはコストがうんと高くつくわけではないし、役に立つことはほぼまちがいない」(p.400)
情報開示することで、当事者は周りの目も気にするため、結果的に削減する行動を起こすと言います。
この部分を読んでいて思い出したのは、日本で行われている価格転嫁への取り組みです。
価格転嫁に応じない企業は公表されます。
「企業名を公表してそこまで効果があるのかな?」と疑問だったのですが、行動経済学的には効果があるということが理解できました。
世間の目が気になったり、社会的プレッシャーがあったりするわけで、企業も行動を変えていかざるを得ない。
しかも、公表する側としては大してコストもかからない。
温暖化対策という点では、「グリーンをデフォルトにする」という考え方も印象に残りました。
グリーンを推進するのであれば、デフォルト設定をグリーンにしておけばいい。
例えば、電力会社のプランで、再生可能エネルギーをデフォルトにし、化石燃料を他の選択肢としておけば、多くの人はデフォルト設定のまま再生可能エネルギーが選ばれやすくなる。
例えば、請求書ペーパーレスを推進したければ、サービス購入の際に電子請求書発行をデフォルトにしておけば多くの人はそれを受け入れるようになる。
グリーンをデフォルトにする。
シンプルなのに効果の大きい施策だと思いました。
行動経済学は、ビジネスでも、国の政策にでも活用できます。
とても興味深い分野です。
