『ワイルドランド(上)』(エヴァン・オズノス著/白水社)

米国はなぜここまで分断してしまったのか、を知りたくて本書を手に取りました。
上下巻あるうちの上巻です。
ジャーナリストとして10年に及ぶ海外生活から2013年米国に帰国した著者は、国が大きく変わってしまったことに驚きます。
トランプ支持はどこからきているのか。
社会の分断はどこからきているのか。
自身のゆかりの地である、コネチカット州グリニッジ、ウィスコンシン州、イリノイ州シカゴの3つの街に暮らす人々を取材し、人々のストーリーをつなぎ合わせていきながら、それらの問いに迫っていきます。
全体を通して、「置き去りにされたアメリカ国民の姿」が表現されていると感じました。
マネーゲームによる格差の拡大、サブプライム危機や金融危機などによる国民への影響、ソーシャルメディアの台頭によるコミュニティの弱体化、富を持つものが政治へ影響を与える現状とトランプ支持へのつながり、企業利益や「強欲」のために起きる環境問題や地域コミュニティの破壊。
これらが今のアメリカに渦巻く不満や怒りのマグマのようなものになっていると思いました。
「オバマ政権の最後の数年に全米各地を回っていきながら、わたしはアメリカの政治・経済エリートに対するむき出しの軽蔑の強さに衝撃を受けた。(中略)国民は金権政治や私的金融取引に対して激しく、そして明確に懸念を抱いていた。」(p.81)
「金融危機とその影響に襲われた年月の中で否定できないほどはっきりしたのは、一部のアメリカ国民が自分たちの優位性を経済面だけでなく政治的にも徹底的に発揮しているということだった。」(p.250)
金融危機で家を手放さざるを得なくなった人(クラーク氏)の話としてこういう記述があります。
「(クラークは)自分のコミュニティを破綻に追いやった人間への驚嘆を隠しもしなかった。『ありとあらゆる混乱が引き起こされたんだが、それはただただやつらの強欲のためだったのさ』と彼は言う。『それでな、そういう連中はすでに十分金持ちなんだぞ!それがカオスの原因で、すべてそういうわけなんだ。強欲だよ』」(p.203)
すごい表現です。
現在、『暴落』(アダム・トゥーズ著)を並行して読んでいます。
2008年の金融危機に関する内容です。
金融危機で起きたことを理解しながら、本書と併せて、米国の中でどうして分断が深まってきたのかを自分なりに理解できればと思っています。
著者のジャーナリストならではの表現が印象に残りました。
「ある場所についてありのままに書くという作業は、権力について書くということ意味するのだ。」(p.125)
