『暴落(上)』(アダム・トゥーズ著/みすず書房)

本書は、2008年のリーマンショックの背景、その後どのような対策が取られたかなどがまとめられています。
上下巻あるうちの上巻です。
上巻では、サブプライム危機の前から、欧米間の金融構造、金融危機、救済、オバマ政権の刺激策までを扱っています。
アメリカの分断がどうして起きたのか知りたくていくつかの本を読んでいる中で、この本に出会いました。
2008年に起きた金融危機では、米国はそもそも危機を作った金融機関を潰すのではなく、国有化するのでもなく、資本増強させるという形で金融システム全体を救うという選択をしました。
「喫緊の問題となったのは、投資銀行倒産の可能性だった。2008年9月には、もはや個々の銀行ではなく、金融システム全体をどんなことをしてでも救わなければならくなっていた。」(p.190)
政府が巨大銀行を国有化することで銀行の再編を行うという選択肢もありましたが、そこへの抵抗感も強かったようです。
FRBと財務省は、国有化ではなく、ストレステストによる規制と監視制度を導入し、銀行の財務状況を向上させる策を取ります。
そして、各国が協調して財政刺激策が行われます。
「2009年と2010年に、アジアと新興市場は危機に対して最も画期的な対応をした。(中略)西洋諸国の財政刺激策のうち本当に重要性があったといえるのは、アメリカが始めた政策だけだった。」(p.318)
本書を読んで印象的だったのは、米国の銀行は政府介入に対して抵抗感がかなり強いということです。
自分たちが作り上げた金融システムで問題が起き、一般市民に大きな影響が出ているのに、自分たちは政府からの介入は受け入れたくない。
信用の上でビジネスをしている金融機関にとっては、政府が援助していることは信用の低下にもつながるということはあるのでしょう。
一方、この危機においても、経営の立て直しが必要な銀行であっても、役員報酬は巨額。
政府からの介入による抵抗感は、自分たちの役員報酬の制限にもつながるという側面もあります。
一般市民が「エリート層」に対して不満を募らせたということは想像できます。
こういった鬱憤が蓄積され、格差や分断なども深まりトランプ現象につながった。
そのように解釈しました。
下巻では、その後に起きる欧州危機などが描かれます。
本書を通じて、2008年の金融危機がどう国際秩序や社会的に影響を及ぼしていったのか、それが米国の分断にどう影響を及ぼしたのかを考えてみたいと思います。
