『アメリカのアジア戦略史(下)』(マイケル・グリーン著/勁草書房)

アメリカが国として誕生してから現在に至るまで、アジアに対してどういった戦略を持ってきたのかがテーマです。
本書は上下巻あるうちの下巻です。
ベトナム戦争の頃からオバマ政権までが描かれています。
アメリカのアジアへの戦略アプローチでは5つの対立軸が出てきます。
- ヨーロッパかアジアか
- 大陸(中国)か海洋(日本)か
- 前方展開の防衛戦をどの位置で引くか
- 自決権か普遍的価値か
- 保護主義か自由貿易か
この対立軸で各政権がどちらに重心を置いてアジア戦略を組み立ててきたのかを見ていくと面白いです。
オバマ政権では、この5つの対立軸の間で揺れ動いていたと著者は指摘します。
これまでヨーロッパ問題が優先されてきた外交政策でしたが、オバマ政権ではアジアへのシフト(ピボット)を鮮明にします。
「彼はアメリカの対外政策においてアジアが最も優先順位が高いと表明した最初の大統領であった。」(p.350)
ただ、このピボットの「概念化と実行は、場当たり的で一貫性がなく、調整されていたわけでもなかった」(p.351)ようです。
日本、中国をはじめとするアジア諸国の疑念を抱かせたともいいます。
本書の原書は2017年に刊行されていますが、その後トランプ、バイデンと政権が変わってきました。
著者の観点からはどういう評価なのか気になります。
本書(翻訳版)上巻の「日本語版への序文」でトランプ政権、バイデン政権に関して触れられています。
オバマ政権では中国から提案された「米中二大国による共同統治」で翻弄されました。
トランプ政権はこの提案を断固として拒否し、その代わりに日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想に賛同します。
バイデン政権のアジア戦略はトランプ政権の方向性が継続されます。
「安倍晋三元首相が提唱した『自由で開かれたインド太平洋』枠組みもまた政策の中核に位置付けた。そのような戦略を継続したのは、それがトランプの構想であるからではなく、日本の構想であったからだ。」(上巻p.vii)
興味深いですね。
著者は日本の戦略に関する著書もありますので、そちらも読んでみたくなりました。
アメリカのアジア戦略に焦点を置いた通史。
難しかったですが、毎回読むのが楽しみになる本でした。
