『3つのゼロの世界』(ムハマド・ユヌス著/早川書房)

グラミン銀行創設者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスさんの本です。
先日バングラディッシュの暫定政権を率いることになりました。
どういう考え方を持っているのか知りたくて本書を手に取りました。
題名にある「3つのゼロ」とは、貧困ゼロ、失業ゼロ、二酸化炭素排出ゼロのことです。
このゼロの世界を作るためには、現在の資本主義の欠陥を直視し、経済システムの再設計が必要と説いています。
経済システムの再設計には3つの基本的な要素があります。
- ソーシャル・ビジネスの考え方を受け入れる
- 人間は仕事を探す者だという考え方ではなく、人間は起業家だという新しい考え方を持つ
- 金融システム全体を設計し直す
現在の経済システムは「利己心」で動くことが前提となっており、上位数パーセントに富が集中し貧困層との格差が広がる仕組みになっている。
人間の「無私」の面が働く経済システムを構築しないといけない。
個人的に面白いと思ったのは、2つ目の「人間はもともと起業家であると考える」ことです。
多くの人は「雇ってもらう」が前提になっています。
ユヌスさんが多くのソーシャル・ビジネスに関わり貧困層の経済自立を支援してきた経験から、人は誰でも起業家としての能力があることに気づいたといいます。
「人間はみな生まれながらの起業家であり、無限の創造力を内に秘めている」(p.37)
この考え方が前提になり、誰もが起業する支援を受けられる環境になれば、失業はゼロに近づいていきます。
共感できる考え方ですし、私自身も起業家支援をする中でこういう考え方を持ち合わせていきたいと思いました。
本書の中で、「ソーシャル・ビジネス・ファンド」という考え方が出てきます。
ソーシャル・ビジネスに絞り投資をしていくファンドです。
「ソーシャル・ビジネス・ファンドは、出資先から利益は得られないので、コストをまかなうために企業からサービス手数料を受け取る必要がある。ただ、目的は巨額の利益を生む有望企業に投資することにはない。貧困削減や栄養改善、医療の提供など、大きな社会的利益をもたらす企業を支えるのが目的なのだ。」(p.241)
こういう関わり方もあるんだ、という気づきが得られました。
いずれ取り組みたいと思っていることがあるのですが、そのイメージを膨らませてくれたような気がします。
10年ほど前にソーシャル・ビジネスを少し勉強し、ソーシャル・ビジネスのビジネスプランを発表するイベントも見に行ったことがあります。
また改めて現在の状況を含めてソーシャル・ビジネスを学んでみたくなりました。
