『アメリカのアジア戦略史(上)』(マイケル・グリーン著/勁草書房)

アメリカが国として誕生してから現在に至るまで、アジアに対してどういった戦略を持ってきたのかがテーマです。
世界情勢の流れの中でアメリカがどう太平洋での存在感を増してきたか、戦略立案者や意思決定者である大統領の判断を交えながら書かれています。
アメリカの台頭、日本の台頭、ソ連の台頭、中国の台頭という流れで描かれます。
本書は上下巻あるうちの上巻です。
上巻は、建国期から1960年まで(アメリカの台頭、日本の台頭、ソ連の台頭の初期まで)を扱っています。
アメリカのアジアへの戦略アプローチでは5つの対立軸が出てきます。
- ヨーロッパかアジアか
- 大陸(中国)か海洋(日本)か
- 前方展開の防衛戦をどの位置で引くか
- 自決権か普遍的価値か
- 保護主義か自由貿易か
この対立軸の中で戦略策定に揺れ動く政府内の人たちの葛藤も見て取れます。
歴史の流れの中でこれらの対立軸がどう変化してきたのかもわかります。
本書を読んでいて感じるのは、大統領となる人もそれなりの戦略的視点を持ち合わせていたんだなということです。
第26代米国大統領のセオドア・ローズヴェルト(在任期間1901-1909)に関してこのような記述があります。
「ローズヴェルトは、ホワイトハウスで執務をする最初のアジア政策についての偉大な戦略家であり、西太平洋において現実的な防衛線を確定する複雑さを最初に認識した指導者であった。」(p.166)
「ローズヴェルトはアジアにおいてより安全で、より大きな影響力を有する立場にアメリカをおくことができた。彼のアジアへの戦略的アプローチにおける一貫性と、その軍事的、外交的実践の巧みさは、今日まで続く重要な教訓を与え、その後の大統領で彼に匹敵する者はほとんどいなかったのである。」(p.168)
これは今の時代でも当てはまるのでしょうか。
歴代の大統領の戦略観を比べてみるのも面白そうです。
過去の歴史が「アメリカのアジア戦略」という視点で描かれているので、とても興味深く本書を読みました。
個々の政策に関しては少し難しく感じますが、全体的な視点として、政策立案者や大統領・閣僚がどうアジアを捉えながら物事を進めてきたかを追うだけでも楽しめます。
下巻は冷戦からオバマ政権までが描かれます。
