『世界の取扱説明書』(ジャック・アタリ著/プレジデント社)
ジャック・アタリさんはフランスで大統領顧問や欧州復興開発銀行の初代総裁などを歴任された方です。
アタリさんの本を初めて読みました。
世界がどういった仕組みで動いているのかを考察しています。
本書冒頭から引きつけられます。
「『歴史』のあらゆる側面(人類学、民俗学、神学、社会学、政治、文化、経済、環境、金融、人口、哲学、科学、技術)を研究すれば、(理論的にではあるが)『世界の仕組み』を見出し、少なくとも2050年くらいまでの未来は予測可能だ。」(p.13)
「形態」(世界中のすべての地域をまとめあげるもの)と「心臓」(「形態」の中心部)という概念が出てきます。
どこが世界の中心地になっていて、他国とはどういった関係になっているかということです。
11世紀には商業が主体になり「商秩序」が始まりましたが、その後現在までに9つの「形態」と「心臓」の変遷がありました。
第1の「形態」では、1250年からブルッヘが「心臓」になりました。
第9「形態」は1973年からカリフォルニアが「心臓」となっており、現在はかろうじてこの「形態」を維持している状態だといいます。
そして、今後われわれは3つの致命的脅威に直面することが想定されます。
気候変動、超紛争、人工化。
これにどう対応していけばいいのか。
本書では、悲観的なシナリオが多く出てきます。
このままでは本当に世界はどうなってしまうのだろうか不安にさえなります。
今のままでは致命的脅威を回避することはできない。
アタリさんは、人類全体で一致団結して「死の経済」から「命の経済」へ急旋回することが必要であると訴えます。
「死の経済」は、「将来世代と自然を毀損する生産活動」(p.230)のことで、例えば化石燃料、肉製品、人工甘味料、タバコ、アルコール、薬物などです。
「命の経済」は、「将来世代の役に立つ生産活動、とくに温室効果ガスの排出量の少ない生産活動」(p.231)のことです。
世界全体がどう「命の経済」へ急旋回できるか。
「われわれ自身が変わらなければ、何も変わらないのだ」(p.246)
急旋回するためには、「誰か(国や世界の機関など)がやるだろう」ではなく、一人ひとりが自分ごととして致命的脅威に向き合っていくことが必要である。
本書を読みそう感じました。
まずは自分自身の価値観、生活スタイル、欲望、願望などを整理するところから。
本書を読んでいる最中はそこまで心を揺さぶるものはなかったのですが、最後まで読んではじめて大きなものを受け取った、そんな読書体験でした。