『プーチン(下):テロから戦争の混迷まで』(フィリップ・ショート著/白水社)

ロシアのプーチン大統領がどういう人物なのか知りたくて本書を手にとりました。
上下巻と分かれており、こちらは下巻です。
2000年の大統領就任から2022年のウクライナ侵攻までが描かれています。
著者のフィリップ・ショートさんは元BBC特派員の伝記作家で、8年にわたる調査取材をもとに書かれています。
ロシアでは公表されている情報が必ずしも真実とは限らないという前提で、さまざまな角度から事柄の本質に迫っています。
最初の原稿が出来上がったあとに2022年のウクライナ侵攻が始まり、その部分も加筆されています。
ソ連崩壊以降のロシアの地位低下に対し、プーチンは大統領として国の体制を整える取り組みをしてきました。
国際的にもロシアの発言力を高めたいという思いもある中、アメリカとの駆け引きに翻弄されていく。
NATOが1インチも東に拡大しないと言っていたにもかかわらず勢力を拡大。
発言力を高めるためには軍事面でも存在感を出さないといけない。
2014年のクリミナ侵攻は、ウクライナのNATO加盟を阻止する狙いがありました。
そして、国内では自分の後継問題をどう整えていくか。
2019年にウクライナの大統領に就いたゼレンスキーとの関係改善がうまくいかず、ウクライナはNATOに接近し始めた。
そういった中で2022年のウクライナ侵攻が起きる。
「プーチンの考えでは、これは基本的に予防的な作戦なのだった。ウクライナがますます西側勢力にしっかり食い込んでしまう前に、いま戦うほうがいい、それが実現して力のバランスが不利になるのを待つことはない」(p.388)
侵攻への決断はプーチンのこれまでのやり方と一貫していると指摘します。
「プーチンは在任中、西側を敵にまわすか、それとも自分自身とロシアの世界的な立場を維持するか、という存続にかかわる問題に直面したとき、常に後者を選んできた」(p.388)
ただ、誤算があった。
短期決戦を考えていたが、結果的には長期戦になってしまった。
今後この紛争がひと段落したあとは、自身の後継問題が前面に出てくる。
本書を読んで感じたのは、プーチンは一定の信念や価値観で物事を進めてきたのだということです。
その考え方がアメリカなど外部からは理解されない。
理解されないからいろいろな手を使って反発する。
親に理解してもらいたくて駄々をこねる子供のような印象を受けました。
本書は上下巻合わせて1000ページ近くあります(文字は小さめ)。
膨大な調査を基に書かれており、説得力もあり、読み応えがあります。
ただ、ロシアに関する知識がない中で読み進めたので、読むのがとても大変でした。
「軸」を定めずに読んでいたため、情報の渦に飲み込まれながらページを繰っていました。
もう少しロシアについて勉強したのち、プーチンという人の「一貫した考え」という軸で本書を読み返してみたいと思っています。
