0186 情の商売

「商売する上で常に心を優先してきた」

84歳になる中小企業の社長の言葉です。

会社を興す前に企業で勤めていたときでも、会社を興したあとでも、取引先と「駆け引き」はやらなかったそうです。

駆け引きなしで取引条件を交渉する。

正直、誠実に、気持ちを大切に。

それをわかっている相手は、社長の姿勢に合わせ、真っ直ぐに向き合ってくれたようです。

心、気持ちを優先して仕事を行い、利は後回し。

中小企業の社長と接する機会が多いのですが、長年続く会社を経営している方でこのような考え方を持つ人は多いように感じています。

「ビジネス」という用語には、そういった情の部分が欠落する印象があります。

効率性や生産性が叫ばれる世の中で、情の入る余地も狭くなっているのではないでしょうか。

「商売は心」−この考え方は古いのか?

理想と現実はあると思います。

経営状況が厳しくなっている場合、情の部分を優先するという判断は下しづらい。

どうしても目先の利に走りやすくなる。

私が経営者の立場であったとき、情を優先したいという熱い思いはありました。

でも、実際には、利を優先したことも多々あります。

決断に迷ったとき当時の会長に相談すると、情を優先する方向を示してくれることが多かったように思います。

「え!? ホントにそれで良いのですか!?」

幾度となくそう思いました。

6年間経営をさせてもらいましたが、全体的には情を優先しきれなかったという思いが残っています。

情を優先しきれなかったことは、経営者として私の力量不足です。

商売をしている人で心を大事にする人は多いですよね。

たとえ利が期待できないことでも、心を優先することで、結果的には物事がいい形で回る。

これを実践している方を見ると素敵だなと思います。

「そういう経費のかけ方をするのですか!」

そう唸ってしまうこともあります。

利で考えていたら絶対に考えつかない経費のかけ方があります。

でも、お客様のためになっていて、結果として自社のためになっている。

「ビジネス」・「経営」より、「商売」に魅力を感じます。

自分もそういう商売人を目指していきたいと思っています。

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/ビジネスコーチ
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