0577 『異次元緩和の罪と罰』

『異次元緩和の罪と罰』(山本謙三著/講談社)

新聞の広告で本書を見かけ、即購入しました。

あの異次元緩和というのは一体なんだったんだろう。

そんな疑問がありました。

「こうした危機時に用いられる手段は、中央銀行による市場への介入強化を意味し、副作用が大きいと考えられてきた。(中略)本来であれば緊急避難的に行う質的緩和策を、平時に、しかも前例のない規模で導入したのが、異次元緩和だった。」(p.19)

質的緩和とは、長期国債や株式等のリスク性資産の買い入れを指します。

2013年から2024年までの11年間続きました。

2024年7月現在、日銀が保有する長期国債は590兆円、ETF(上場投資信託)は簿価で37兆円になります。

そして、今後はこのリスク性資産を圧縮していかなければいけません。

「国債の中途売却やETFの市場への売り戻しは、市場を攪乱する可能性があり、現実にはなかなかとれない選択肢だろう。」(p.183)

長期国債を満期まで持つことで残高を段階的に下げていくことになった場合、正常な状態に戻すには最低10年はかかると指摘します。

ただし、「この試算の前提が、正常化完了までの間、いっさい新規の国債買い入れを止めたうえでの話である。」(p.187)としています。

この11年間で多くの課題を残し、これからも前途多難であることがわかります。

著者は、異次元緩和による成果は少なく副作用が大きかったと指摘します。

実質GDP成長率はほとんど変わらず、財政規律もゆるみ、金融システムを弱体化させました。

そして、国富(国民全体が保有する資産から負債を差し引いたもの)は対外価値で1/4にもなりました。

「異次元緩和は、じつは円安に多くを依存した政策だった。国内資源の対外価値を引き下げることで、物価の上昇を促そうとした政策だった。その分、対外価値でみれば、日本は貧しくなった。」(p.152)

これだけ副作用が大きいなら、なぜ途中で立ち止まれなかったのか。

「期待を直接変えようとする政策の宿命として、みずからの読み違いを真正面から認めることに強い躊躇があったからだろう。」(p.200)

国民に「物価上昇2%の実現」や「景気が良くなる」という期待を持たせるため、自信を持って取り組んだ「異次元な」政策であったため、この政策を途中で変えることは自らの過ちを認めることにもなってしまう。

例えるなら、大きな花火を打ち上げれば多くの人に見てもらえると自信があったが、上げてもなかなか見てくれる人が増えない。上げ続ければ見る人は増えると信じ、そう他者にも信じこませてきたが、いつの間にか引き返せなくなってしまった。

こんな感じでしょうか。

本書のタイトルにもありますが、異次元緩和の「罪」と「罰」が大きいことを理解できました。

また、「物価目標2%」は世界的標準だという認識を持っていたのですが、そこにも疑問を呈しているところが印象に残りました。

「過度のデフレ懸念から物価目標を高めに設定すれば、金融緩和の行き過ぎが起きる。」(p.102)

「日本経済にとって大切なのは、物価目標2%の達成ではなく、生産性の向上である。」(p.97)

多くの学びが得られた本でした。

経営経験やコーチングの実践を通じて、深い対話により経営の選択肢を広げ、納得感のある意思決定をご支援しています。また、組織やチームの関係性を育む支援に取り組んでいます。3Cサポーター/中小企業診断士
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