『言語化するための小説思考』(小川哲著/講談社/2025年)

「意味のないセリフはない」
演劇を学んでいるときに先生からよく言われた言葉です。
作者は意図を持ってそのセリフを書いているし、また動きの指示も出している。
戯曲はセリフだけで進行するので不要なものを埋め込んでいる余裕はありません。
本書は小説に関して書かれていますが、同じような考え方が出てきます。
「一見して伏線になっていないように思える『情景描写』も、なんらかの暗示になっていたり、なんらかの副次的な役割があったりする。逆に言えば、そういった機能のない『情景描写』は作品にとって不要である。」(p. 85)
小説は描写も多いので、作家が好きなだけ描いてもいいのだと思っていました。
やっぱり意味がある、どの文章も。
では、どう書いているのか。
「最初に考えるべきなのは『書いてみたいこと』や『考えてみたいこと』だと思う。(中略)大事なのは『答え』ではなく『問い』だ。」(p. 93)
はじめからあらすじを決めて着手するというよりも、書きながら出てきたアイデアや発想を生かしていくことで面白い作品になっていくと。
作家は書くという作業を通じて、自身の中にある問いを探求している。
私の仕事も同じで、事業者の課題に一緒に取り組みながらより良い解を模索しています。
著者は世の中の原理は構造が似ていると述べています。
「まず、自分の目でしっかりと世界を見る。見えた世界を抽象化し、別の世界に置き換えて個別化する。」(p. 37)
小説の向き合い方も経営支援の向き合い方も構造は似たようなものです。
自分の中にある「問い」の探求手段のひとつが小説である。
そう捉えたら、小説で表現してみたくなりました。
