『日銀の限界』(野口悠紀雄著/幻冬舎)

ここ数年間の円安、物価高、賃金動向に関して解説しています。
本書は2025年1月に出版されました。
2021年から輸入物価が高騰しました。
原材料価格が上がることで企業の原価が上がります。
企業はそれを販売価格へ転嫁したことで、消費者物価が上がりました。
その後、2023年に輸入物価が下落しましたが、消費者物価は下がりませんでした。
これは、企業が販売価格を下げなかったことによります。
当然、企業は利益が増えます。
著者の野口さんは、日本でも「強欲資本主義」が見られるとしています。
ここ数年で「物価と賃金の好循環」という言葉を幾度となく見聞きしています。
本当にそれは正しいアプローチなのだろうか。
本書では、賃金を上げる原資は何に基づいているかが大事であると指摘しています。
企業の生産性が向上したことで賃金が上昇することがあるべき姿。
現在起きていることは、生産性が上がっていない中で、賃金上昇を先に行い、それを価格転嫁していくという流れです。
「『賃金の上昇を販売価格に転嫁せよ』とは、『消費者の負担において賃金を上昇させよ』ということであり、極めておかしな話だ。」(p. 240)
生産性向上を目指さなければいけないが、そのためには金融正常化が必要である。
「日銀が言うように、『賃金と物価の好循環が確認できたら、金融正常化する』のではない。それでは順序が逆だ。」(p. 247)
「物価と賃金の好循環」を考え直す機会になりました。
本書でも書かれていますが、中小企業は賃金を上げるだけの余裕はありません。
社会的な賃上げ要請もあり、賃金を上げないと人も採用できない状況が進んでいます。
無理して賃上げし、それを価格転嫁していくという流れが強まっています。
ここで忘れてはならない部分は、「生産性向上」であることを再認識しました。
いかに生産性を上げていけるかが企業にとって大事なポイントであり、「賃金→価格転嫁」が先にくるものではないということを押さえておきたいと思います。
