『「書くこと」の哲学』(佐々木敦著/講談社)

本書は、「書くこと」に関する16の講義と3つの補講という構成となっています。
こうあるべきだ、と言われてきたものも一旦脇に置きつつ、書くことを改めて考え直すという視点で話が進められていきます。
一番印象に残った点は、「長文だから悪いというわけでない」というところです。
読みやすくするために短い文にしましょう、とよく言われます。
だらだらと「。」がなく続く文は確かに読みづらい。
でも、著者の佐々木さんはこう指摘します。
「短くはない文章にだって効用がある(こともある)と小声で言っておきたい気持ちがあるのです。(中略)やり方次第で冗長性やノイズは自分の文章の武器になりえるし、それは必ずしも文学や文芸といったジャンルに限ったことではありません。」(p. 61)
意図して長文で書く作家もいます。
「短文=良い」と思わされていますが、短文にしすぎるとどの文章も似たり寄ったりで、個性がなくなる可能性もある。
文章における個性とは何なのか。
「どこかにある(らしい)、一般的な、それゆえに無個性の、上手だとされている、だがなんの面白みもない、借り物だったりお仕着せだったりするような『ことば』を、あたかもコスプレみたいに身に纏うのではなく、自分の内と外に溢れている『ことば』、その複雑にして豊かなありさまに向き合ってみることが、一見遠回りのようでいて、とりわけ『文章を書く』という行為においては、とても重要なのではないかと思うのです。」(p. 81)
「どうして自分はそんな言葉遣いをするのか、なぜ自分の内にそのような『ことば』があるのかを考えてみる、(中略)そこに自分の言葉の『個性』と呼ぶべき何かが見え隠れしているのではないか」(p. 82)
自分の文章を客観視して見直すことも大事であり、そして、その自分らしさを認めてあげることも大事だと理解しました。
この他にも、書き出しは読み手が見るはじめての一文なのでとても重要であること、完璧な文章はないのであるから見直し・書き直しはどこかで区切りをつけなければいけないことなども印象的でした。
書くことが楽しくなる、自分の言葉を大事にしたくなる、さらに書きたくなる。
そんな本でした。
