0299 『戦略の要諦』

『戦略の要諦』(リチャード・P・ルメルト著/日経BP 日本経済新聞出版)

先日著者の『良い戦略、悪い戦略』を読みとても学びが多かったので、最新著書である本書も読んで「戦略」に関して理解を深めたいと思い手に取りました。

ビジネスを行う上で、どう戦略を立てていくか。

その考え方を著者が実際に経験した事例を踏まえて解説しています。

一貫しているのは、「常に課題からはじめること」です。

課題を見極めその解決策を考えることが、戦略を立てる際の軸になります。

著者は戦略と目標との違いをこう表現しています。

「会社にとって死活的に重要な課題あるいは機会は何かを分析も理解もせずに恣意的に目標が決められたとすれば、それは裏付けのない目標と言わねばならない。対照的に、よい目標はすぐれた戦略策定の結果として導き出される。」(p.371)

目標を立てるところからスタートするのは違うということですね。

あくまでも課題が先。

これに関していろいろ考えさせられました。

私はコーチングの考え方を経営支援に取り入れており、はじめてお会いする際には課題の抽出から始めるのですが、何回かお会いしている企業では課題を脇に置いて目標を描くということも行ってきました。

目標を描き、現在との差を明確にすることで、その差を埋めるために何をすべきかを洗い出すという考え方です。

それも効果的な部分はあると思いますが、現実離れしてしまう恐れはあり、著者の言うとおり課題から出発する必要があると思いました。

「コーチングの限界」という言葉が頭に浮かんだ状態で本書を読み進めました。

「強み」に関しても書かれています。

事業の強みを明確にすることは基礎中の基礎ですが、その大切さを改めて認識する機会になりました。

強みや優位性を探す際には、「非対称性」に着目することが良く、5つの視点で考えていきます。

  1. 情報
  2. ノウハウ
  3. 地位
  4. 効率
  5. 組織のマネジメント

何をやるにしても「強み」が生かされているかどうかを点検していくことが大事であると感じました。

現在ある事業者さんの新規事業の立ち上げプロジェクトに参画しているのですが、会社にとってはじめてのことも多く、どうしても「一般的な方法」を取りがちになってしまいます。

その方法はどれも「正しい」または「効果的」と考えられるのですが、本当に会社の「強み」が生かされているかというと少し疑問に思うところもあります。

しっかり「強み」が生かされた選択肢を選んでいくことが大事であり、プロジェクト運営でもそこを意識していきたいと強く感じました。

「アイデアや案は多角的に何度も検討し直すこと」

『良い戦略、悪い戦略』を読んで一番の気づきだったのですが、この考えを頭に入れながら本書も読み進めました。

アイデアなどの「ひらめき」に関し6つのコツも紹介されています。

  1. 粘りぬく:厳しく検証、アイデアがよさそうに思えても、ひとまず保留にして別の道を探すこと
  2. 類推する:類例、前例、模範や教訓を探し、それらから類推すること
  3. 視点を変える
  4. 暗黙の前提を言語化する
  5. つねに「なぜ」と問う
  6. 無意識の制約に気づく

『良い戦略、悪い戦略』・『戦略の要諦』ともに、「戦略」に関して大きな学びと考えるきっかけをもらいました。

今の時期にこの2冊を読めたことは自分には大きかったです。

35歳のときに40年以上続く会社を後継者として 事業承継を行い、6年間代表として経営に携わりました。代表を退任後は、中小企業の事業承継を支援しています。中小企業診断士/ビジネスコーチ
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