『読書と社会科学』(内田義彦著/岩波新書)
ある本でお薦めとして挙がっていたので、本書を手に取りました。
本をどう読むか、社会科学をどう捉えるか、そういった観点で示唆に富んだ内容となっています。
本を読むにあたり、まずは著者や自分自身を「信じる」ことが大切であると言います。
著者の考え方、主張などをまずは信じる。
信じないと内容に踏み込めないと。
そして疑問に感じた点や納得いかないという自分の中から湧き上がるものも信じる。
この両面があることで、深い読みができる。
本を読み終わったあとに感想を書くことも推奨されています。
良いものに接するとすぐには感想は出ない。
「もやっ」としたものが残る。
「著者が、文章に苦心して凝結させたところの、自ら見、伝えたかったものが、直接に私の生活現実にかかわって、私の魂に響いてくるからこそ、とらえ難い(中略)その『いぶき』を大切にして、それを取り逃がさないように、しっかり取り込むために感想を書く。」(p.58)
「読む」にあたってのこの2つのポイントが印象に残りました。
著者の言うことを疑いながら斜に構えて読むくらいなら、読まない方がいい。
全身全霊で著者が文章に表したものを、しっかり受け取るつもりで読む。
その中で疑問が生じたものを大切にする。
そして、ひとつでもいいから、本を読んで感じたことを自分の言葉で表現する。
読み方のヒントを教えてもらいました。
本書の中で「概念装置」という言葉が出てきます。
専門語の組み合わせのことです。
ある事象に対し、定義された専門語があることで、その事象を捉えやすくなる。
先人たちがあらゆる専門語を作って事象を定義してきました。
それらがあることで、世の中で起きることを私たちは捉えやすくなる。
少し理解しづらいのですが、私はそのように理解しました。
例えばビジネス用語で「強み」という言葉があります。
自社が得意としていることです。
日常語である「強み」とはまた違ったニュアンスです。
ビジネスで「強み」という概念があることで、分析や考察がしやすくなります。
「日常語の世界にうずまり日常語だけに頼っていては、学問的に解明することができないだけでなく、解決すべき問題そのものも明確には捉えられない。で、学術語を組み合わせた概念装置をつくり、それを駆使することで問題を発見し解決する。」(p.147)
そして、このような概念装置を取得する手段、自前の概念装置を作る手段が、読書だと。
良い読書体験ができました。
ただ、正直、わかったような、わからないような。
言葉にも表現しづらい。
でも、なんとなく理解できました。
これからさまざまな本を読んでいく中で、この「なんとなく」が明快になっていくような気がしています。