『サピエンス全史 下』(ユヴァル・ノア・ハラリ著/河出書房新社)
ホモ・サピエンスのこれまでの歩みを描いた本です。
本書は上下巻とあるうちの下巻で、科学革命を中心に描いています。
科学革命は約500年前に始まりました。
科学革命は「無知の革命」であり、「人類は自らにとって重要な疑問の数々の答えを知らないという、重大な発見だった」(p.77)といいます。
今まで宗教などによりすべてが理解されていると思っていたことが、無知の自覚により、貪欲に知識を求めていく流れになります。
そしてこの科学の発展には、帝国(政治)と資本(経済)が大きく寄与します。
科学の発展、経済発展が進み、産業革命により生産性が飛躍的に向上しました。
でも、本当にわれわれは幸福になれたのか?
地球上の生物という視点では幸福度はどうなのか?
「動植物さえも機械化された。(中略)家畜も痛みや苦しみを感じる生き物とみなされることがなくなり、代わりに機械として扱われるに至った。」(p.225)
「地球全体の幸福度を評価するに際しては、(中略)人類の幸せだけを考慮することもまた誤りだろう。」(p.288)
今後われわれはどこへ向かうのか?
自然選択の法則を破り、生物学的に定められた限界をも突破しはじめている。
生物工学(遺伝子移植など)、サイボーグ工学(生体と機械の組み合わせ)、非有機的生命工学(コンピュータプログラムなど)が自然選択に取ってかわろうとしている。
全体を通していろいろ考えさせられる本でした。
「ホモ・サピエンス」という種がどう地球を支配してきたのか、それにより他の種がどういった影響を受けてきたのか。
特に「動植物の機械化」というところに心が動かされました。
食物連鎖という観点では、他の種の命を頂くことは大事なことです。
ただ、そのために例えば家畜をストレス環境で育てたり、生産量を増やすために機械的に鳥の卵や牛の乳を生み出したりしていることを、どう捉えていけばいいのか。
今まであまり考えてこなかったことだったため、考える良い機会になりました。
もしかしたらホモ・サピエンスに替わる種がこの地球を支配することになるかもしれない。
この視点がとても面白い。
最近は生成AIの話題を毎日のように目にします。
AIが地球を支配する時期がくるかもしれない。
AIについて少し深掘りしたあと、続編でもある『ホモ・デウス』を読んでいこうと考えています。