『これがすべてを変える―資本主義VS.気候変動 上』(ナオミ・クライン著/岩波書店)
昨年ナオミ・クラインさんの『ショック・ドクトリン』を読み、内容に衝撃を受け、著者の別の本も読んでみたいと思っていました。
こちらの本では、気候変動という危機と、資本主義という論理との間でどのようなことが起きているかが語られます。
上下巻あるうちの上巻です。
「この危機が、破滅的な温暖化を未然に防ぎ、不可避の災害から人類を守るための解決策を打ち出すきっかけになるのではなく、またしても『一パーセント』の人たちの懐を肥やすために利用される恐れがある」(p.11)
冒頭から強いメッセージが伝わってきます。
「私たちが排出量削減に必要なことをしてこなかったのは、それが規制緩和型資本主義(中略)と根本的に相容れないものだからだ」(p.24)
現在の我々の社会のシステム(イデオロギーの違い、企業利益、貿易制度など)では、気候変動に対して十分な対応がしづらいことを指摘していきます。
また、環境保護を謳う大きな団体の偽善ともいえる振る舞いも明らかにしていきます。
そして、我々に必要なのは下から圧力をかける大衆運動であると著者は訴えます。
上巻は、主に今まで気候変動に対して国、企業、NGOなどがどのような対応をしてきたのか、そしてその問題点は何かを議論しています。
下巻では、それに対して何を変える必要があるのかが提示されるのでしょう。
気候変動対策を加速させないといけない。
時間も限られているし、待ったなしです。
一方で、現在の社会システムの上に我々が存在していることを考えると、綺麗ごとだけでは解決しない。
目先の利益を重視するのも人間の性です。
上巻までを読んでいて気になったのは、批判的な論調が多く、そのような人間の性とどう折り合っていくのかという視点が少ないところです。
下巻でどういったことが語られるか楽しみです。
原書は2014年に刊行されているので、10年前の段階での状況を述べています。
読みながら「この10年でどこまで進展してきたのだろうか」という思いになりました。
アメリカ大統領選を見ていても、未だに温暖化対策に否定的な人が候補者になっている。
著者のナオミ・クラインさんは現在の状況をどう見ているのか知りたくなります。