『地球の未来のため僕が決断したこと』(ビル・ゲイツ著/早川書房)
ビル・ゲイツさんが気候変動や対策に関して思いを述べている本です。
人間の活動によって排出される温室効果ガスを、5つのカテゴリーに分け、それぞれの課題と解決のための技術について説明しています。
- 「ものをつくる」(セメント、鋼鉄、プラスティック)
- 「電気を使う」(電気)
- 「ものを育てる」(植物、動物)
- 「移動する」(飛行機、トラック、貨物船)
- 「冷やしたり暖めたりする」(暖房、冷房、冷蔵)
その中で、「グリーン・プレミアム」という考え方が出てきます。炭素を排出している既存技術と排出ゼロの新技術でかかる費用の差のことです。この追加費用が価格に乗ってきます。
このグリーン・プレミアムがプラスになっている間は、今よりも価格が高い(コストが上乗せされている)ものを購入しようと思う人も少なく、新技術への移行が進みづらくなります。
例えば、従来のガソリン車より電気自動車の方がコスト(価格、維持費用など)が高くなっているうちは、どれだけ環境に良くても、電気自動車が主流にはなりづらい。
技術開発が進む中で、どうこのグリーン・プレミアムをゼロに近づけていくか。
補助を出したり、仕組みを整えたりなど、国が果たす役割は大きい。
そして、気候変動への対応策として大事になることを著者はこう指摘します。
「ポイントは、技術、政策、市場の三つのすべてに同時に力を注ぐことで、イノベーションをあと押しし、新しい企業を誕生させて、新製品を早く市場に送りこむということにある。」(p.263)
本書を読んでいて、ビジネス界で長年イノベーションを起こしてきたビル・ゲイツさんだからこその視点も多いと感じました。
理想論だけでは気候変動の解決は不可能で、ビジネスや経済の仕組みの中でどう進めていけるのかを土台にして話を展開しているところに好感を持ちました。
気候変動の研究者が書く本も興味深いのですが、ビジネス視点でも書かれている本書は現実的で大変勉強になります。