『物価とは何か』(渡辺努著/講談社選書メチエ)
2ヶ月程前、著者である渡辺努さんの『世界インフレの謎』(講談社現代新書)を読みました。
世界中で起きているインフレのことをわかりやすく説明されており理解が深まりました。
他にも渡辺さんの著書を読みたいと思い、こちらの本を手に取りました。
いくつかの理論と併せて物価についてわかりやすく書かれています。
経済関連の本は難しい記述が多いのですが、渡辺さんの語り口がすっと頭に入ってくるので、大変読みやすく疲れずに読める本でした。
日本がずっとデフレから抜け出せないでいる理由として、「価格据え置き慣行」を挙げています。
企業の経営者が提供している商品やサービスの価格を上げられずにいる。
コストが上がってもできるだけ価格を据え置く努力をする。
欧米などは価格を柔軟に変更することを消費者も了解しているのに対し、日本の消費者は値上げにかなり敏感になっています。
たとえ知名度の高い大企業が先頭を切って値上げを行ったとしても、なかなか競合他社が同じように値上げに踏み切らない。
この「相互作用」(お互いに影響し合う)が弱いことが日本の特徴のようです。
最近では物価も上がっており、社会的に従業員の賃金上昇圧力も出てきました。
賃金を上げるためには企業は価格転嫁をしていかなければいけません。
個人的には、それらがいい循環になっていけば日本の経済も好転してくるのではないかという期待感を持っています。
ただ、企業経営者の立場としては、商品やサービスの値上げは相当な覚悟が必要です。
社会全体でこの「相互作用」が起きる状態になれば、多くの経営者も値上げに踏み切りやすくなるのだろうと思いました。
経済は世の中の流れであり、身近なものでもあります。
渡辺さん最後にこう書いています。
「物価は私たちの身近にあるものです。(中略)多くの人は物価についてそれぞれ直感をもっていて、それは人によって千差万別です。(中略)直感は尊重されるべきだと思っています。経済という舞台での演者は消費者や労働者や企業人(つまりみなさん自身!)であり、私のような経済学者は群衆にすぎません。群衆の評論よりも演者の直感の方が的を射ていることが多いのは当然です。」(p.324)
私は経済に関心を持っていろいろ本を読み始めましたが、学者ではないし、経済学もそこまで詳しくありません。
経済を「難しいもの」と捉えてしまっていたのですが、経済は身近にあるものなので、そこまで難しく考えなくても良いのではないかと思いました。
自分が日々の生活で感じる「直感」も大事にしていければいいなと思います。