英国『The Economist』誌(2023年7月8日号)で気になった記事があります。
電池に欠かせない「ニッケル」を深海採掘するかどうかで意見が割れています。
気候変動に対する世界共通の目標「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2Cより十分低く保つとともに、1.5Cに抑える努力を追求すること」のために、電気自動車(EV)の普及が進んでいます。
電池の材料となるニッケルなどの希少金属をどう確保するかが課題になっています。
ニッケルの生産量1位はインドネシアで、陸上での採掘です。今後も生産量の増加が見込まれ、ニッケルを採掘するために森林破壊が進んでいくことが懸念されています。
深海にはこういった希少資源が豊富に眠っているといいます。
太平洋ハワイ沖にある「クラリオン・クリッパートン・ゾーン(CCZ)」という海域の水深4000メートルのところに豊富にあり、世界の陸上埋蔵量の3倍近くのニッケルが眠っているといわれています。
この公海の深海採掘では、ルールがまだ定まっておらず、採掘は始まっていません。
国際海底機構(ISA)という国際機関が30年近く検討していますが、なかなか決まらない状態のようです。
慎重になっている理由のひとつに、深海の採掘により生態系が壊れ、さまざまな生物への影響が起こる可能性があるという意見があるためです。いろいろな調査を行っていますが、実際にはどれだけ影響があるのかが読めないといったところのようです。
気候変動の目標達成のためには、今のニッケル採掘量(年間250万トン)では足りず、2040年までに年間600万トンが必要となると試算されています。
この深海採掘ができるかどうかは大きな意味を持ちそうです。
深海採掘をしてニッケルを確保しないと世界の気候変動目標達成がより遠のく。一方で、深海採掘により地球へどのような影響が起きるかわからない。
この2つの見方が対立しているところが興味深いと思いました。
現在、国際海底機構(ISA)の理事会が開催されており、深海での資源採掘が認められるかが焦点となっています。
どういう流れになるのでしょうか。
大変興味深い問題です。
人間はこの地球上の資源を利用してさまざまな技術発展をしています。
そのことを考えるだけでも、すごいことだと改めて思います。
暮らしを良くするために地球にあるものを利用する。地球が少し状態がおかしくなってくると(気候変動など)、地球にある資源を利用して新たな方法を模索する。
地球は資源の宝庫ですね。
そして、人間の知恵もすごいですよね。