『ショック・ドクトリン 上・下』(ナオミ・クライン著/岩波書店)
NHK『100分de名著』の6月がこちらの本でした。
本の解説を聞きながら読み進めたいと思ったので、番組に合わせてこちらの本を手に取りました。
アメリカの自由市場主義がどう世界に負の影響を与えたかが書かれています。
戦争、自然災害、政変などの危機で人々が「ショック」状態になっているうちに、民営化、規制緩和、自由貿易、社会支出の大幅削減などの経済改革を強行していく。
反対勢力に対しては、ときには暴力を含む強い弾圧を行う。
結果的に、富裕層と貧困層の格差が拡大し、テロ攻撃を含む社会的緊張の高まりを助長することにも繋がる。
チリをはじめとする70年代のラテンアメリカ諸国、イギリス、ポーランド、中国の天安門事件、南アフリカ、ソ連崩壊、アジア経済危機、9・11以後のアメリカとイラク戦争、スマトラ沖津波など、様々な事例を挙げて検証しています。
物事には裏の面があるということをハッキリと突きつけてくる本です。
今まで「正しい」と信じていたことも、裏の面をしっかり見て再度判断することが大事であることを強く認識させられました。
ブッシュ政権は、2002年に米国国家安全保障戦略の中で、「国家を成功させる持続可能なモデルは、自由、民主主義、そして自由企業体制の組み合わせ以外にはありえない」と主張。
しかし、その後、新自由主義に反対する動きが出てきました。
「アメリカの強大な軍事力を後ろ盾にした主張だったが、それでも世界各地の市民がそれぞれの持つ自由を駆使して自由至上主義にノーを突きつけるうねりは、食い止められなかった。」(p.653)
本書を読んでいて思ったのは、結局はアメリカが世界を動かし、何か綻びが大きくなると方向転換していき、また綻びが出るとまた違った方向に転換していくのだと。時代はそのように転換していく。そして、その裏には、人間の「欲深さ」がしっかり根づいている。
アメリカが今世界で何をしようとしているかを日々追っていくことで、時代の大きな流れの一端が掴めてくるのではないかと思いました。
物事には表と裏があるということを考えさせられる本でした。
著者のナオミ・クラインさんは、気候変動に関しての著書もあります。
次は、気候変動と資本主義がどう絡み、どのような「裏」の面があるのかを学んでいこうと思っています。